旧久邇宮邸(通称「パレス」等)の重要文化財への指定について (2017年11月)

 聖心女子大学構内の旧久邇宮邸御常御殿(通称「パレス」)は、登録有形文化財として、これまで大切に保存すると共に、学生の課外活動や授業などの場として活用してきましたが、この度、国の重要文化財に指定されました。

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パレス 〔 重要文化財 2017(平成29)年指定 〕

 「パレス」と呼ばれているこの建物は、旧久邇宮(クニノミヤ)邸の御常御殿(オツネゴテン)と小食堂で、創建当時の小食堂は旧久邇宮邸本館の南東に位置し、廊下を介してその東側に西洋館がありました。現在の図書館付近になります。小食堂及び本館車寄(クルマヨセ)(現クニハウス車寄)を含む日本館が竣工したのは1918(大正7)年7月です。同年6月に竣工した西洋館がわずか1年余りで焼失したことから、その跡地に御常御殿が建築されました。御常御殿は1922(大正11)年3月起工、翌年の関東大震災を経て1924(大正13)年12月に竣工しました。
 旧久邇宮邸は久邇宮家2代邦彦(クニヨシ)王が営んだ本邸であり、香淳(コウジュン)皇后(邦彦王長女)は、1924(大正13)年1月、後の昭和天皇との御成婚の折、この本館車寄より宮中に向かわれました。

〜 御常御殿(オツネゴテン) 〜


旧久邇宮邸殿下書斎

 御常御殿は久邇宮家の日常生活の場として建てられたものです。設計は森山松之助、施工は横溝豊吉で建築面積420.43u、入母屋造(イリモヤヅクリ)一部切妻造(キリツマヅクリ)の日本建築で、1階には和風意匠でまとめられた居間、寝室、化粧間など、2階には和洋の要素を混在させた書斎、内謁見室などがあり、襖(フスマ)や杉戸、格天井(ゴウテンジョウ)は錚々たる日本画家の作品によって彩られています(このうち天井画は、現在東京国立博物館に寄託)。建築材には台湾産の木材や屋久杉などが用いられ、特に階上のクスノキの床板とケヤキの大板は往事を偲ばせるものです。

〜 小食堂 〜


 旧久邇宮邸小食堂

 本館創建当時の建物である小食堂等の旧久邇宮邸本館は、宮家造営課の設計とされています。建築面積291.32u、入母屋造(イリモヤヅクリ)。小食堂は寄木張りの床で、折上格天井(オリアゲゴウテンジョウ)には天井画が飾られています。大正期の皇室建築を偲ばせる壮麗な室内装飾から、大学では長く謁見(エッケン)の間と呼んでいました。
 なお、御常御殿へ至る廊下の南側には、御婚約時代の香淳皇后が使われたという建具のある和室が配されています。

〜 聖心女子大学と旧久邇宮邸のあゆみ 〜
 江戸時代、本学の敷地と、北に隣接する日本赤十字医療センター・日本赤十字看護大学・広尾ガーデンヒルズとをあわせた一帯は、下総佐倉藩堀田家の下屋敷でした。このうち、本学の敷地には、1918(大正7)年に久邇宮(クニノミヤ)家の本邸が建設されましたが、太平洋戦争後は国の管理を経て、映画会社大映の所有となり、時代劇のロケなどにも用いられていました。聖心女子学院は、この地を1947(昭和22)年末に購入し、翌年4月の大学開学を迎えることとなりました。堀田家当時の遺構としては、南門付近の石垣があり、旧久邇宮邸時代の建造物としては、「パレス(御常御殿(オツネゴテン)・小食堂)」、「クニハウス(旧久邇宮邸本館車寄(クルマヨセ))」、「正門」などが遺されています。


第1〜3回生とインターナショナル
スクールの生徒(1949年)

 1948(昭和23)年聖心女子大学設立に際し、旧久邇宮邸跡地を購入した当時、裏門(現在の南門)から階段を上ると、右手に広い芝生があって、その奥に御殿があり、見事な藤棚が横手にありました。丘の上からはさえぎるものは無く、はるか三光町(現港区白金)の聖心女子学院が眺められました。当時、旧久邇宮邸の建物は靴で出入りできるように床はリノリュームを張り、各部屋は教授室、謁見の間と呼ばれた小食堂は聖堂として、日本間は教室として使用されていました。約60名の学生(1、2回生)は少数に分かれ授業をうけ、襖越に隣の授業が聞こえてもさほど気にならなかったそうです。建物を汚すことが無いように、インク壺を持ち歩かないというルールを定めた、などといった事が伝えられています。
 1949(昭和24)年、1号館建築に当たり、この建物は現在の場所に移築されました。1950(昭和25)年1号館が完成し、大学の機能がすべて1号館に移った後も「パレス」の使用については、幾多の変遷を経てきました。プライベート・レッスンと呼ばれて、日本文化を伝承するためにお茶やお華のお稽古の場としての使用や、1977(昭和52)年頃の一時期には、学生達のラウンジとして使用されたこともありました。

 1986(昭和61)年の修復工事で旧久邇宮邸創建当時の内装等の御殿の姿がほぼ再現されました。
 また、近年の厳しい気象条件を受けて雨漏りや瓦の落下等が拡大するなど大規模補修が必要な時期を迎えたため、2015(平成27)年4月から2016(平成28)年3月にかけて、既存壁の耐震壁化や屋根の軽量化による耐震補強を含めた補修工事を行いました。本工事は文部科学省の施設整備費補助金の対象事業となっています。
 2017(平成29)年、「パレス」は和風基調で建築された宮家本邸の唯一の現存例であり、皇室建築の系譜を考える上で、「意匠的に優秀なもの」、「学術的価値の高いもの」として、「正門」、「附(ツケタリ)車寄」とともに国の重要文化財に指定されました。重要文化財としての指定名称は「旧久邇宮邸(聖心女子大学)」です。
 御殿の姿を再現して以降は主に茶道、華道、筝曲、日本舞踊、能楽など伝統的日本建築にふさわしい学生の情操教育の場としての利用に加え、毎年実施している一般公開の機会を通じて、この貴重な文化財を多くの方々に御覧いただいております。


旧久邇宮邸正門


旧久邇宮邸本館玄関車寄

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