基礎課程演習の風景

基礎課程演習20 (持続可能な未来へのいざない) のご紹介

【学習目標】
 持続可能な未来につながる基本的知識を習得し、サスティナブルな社会づくりに求められる価値観や構想力、スキルを養う。

【授業概要】
 地球温暖化や世界同時不況など、現代社会におけるグローバルな課題に取り組む。毎回、学校現場などで実際に使われている持続可能性に関するビデオ教材を検討し、環境や平和に関する諸問題についての理論や実践を学ぶ。さらに国内外において<いのち>や<くらし>を大切にした実践に関する事例研究(ケーススタディ)をグループで行い、プレゼンテーションの基本的な技法についても習得する。

教育学/初等教育学専攻 永田佳之

【基礎課程演習20のシラバス(ご参考)】

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授業実施日:2011年4月22日

 授業初日、初対面でやや緊張気味の参加生徒同士でアイスブレーキング(※1)をバルコニーで行いました。
 1枚のビスケットを2つに割り、ばらばらに生徒に配ります。自分のビスケットとぴったり合うもう半分のビスケットに出会うまで、生徒たちは自己紹介をしながら「ビスケット合わせ」をしていきます。

 アイスブレイク後は、教室に戻り初めての講義へ。講義といっても、これから毎週続く各授業に共通するテーマである「持続可能性」や「持続可能な社会」への導入のアクティビティとして、「3.11をふりかえる」というテーマで開発教育教材(※2)を使用したワークショップを行いました。

基礎課程演習20

 ワークショップでは、未曾有の震災をふり返るために右のようなシートを全員に配りました。

●震災が起こった時に感じたこと
●いま感じていること
●世のなかで変わると思うこと
●私が変えたいと思うこと
という視点から、それぞれが震災や、震災後の社会について考え、特定のシートに記入した各自の想いや考えなどを共有しました。

 学生たちは6つの小グループにわかれてシートに記入した意見等を分かち合い、クラス全体でも次のような意見を共有しました。
●助けになることができなくて、もどかしい。
●これから、節電や節水など当たり前のことを当たり前にしていきたい。
●もしもの時どうするのか、家族で話し合いたい。
●つながりの大切さを知った。人と人の絆を大切にしたい。
などの言葉が挙げられました。

 本格的な授業は5月からになりますが、初回の授業から学生たちの意欲を感じられた授業となりました。

※1 アイスブレーキング: 初対面の参加者同士の緊張や抵抗感をほぐし、円滑な人間関係を構築するために行われるアクティビティ
※2 開発教育教材: 世界で起こっている貧困、戦争、格差などの問題を知り、考え、その解決のために行動することを目的とした教材。
 参考:開発教育協会(DEAR)


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授業実施日:2011年5月13日
『持続可能な未来へのいざない−サスティナブルな地球社会に向けた<技法>−』

 授業第2回目となる今回から、講義形式での授業が本格的にはじまりました。
 近頃では、生活の様々な場面で「持続可能性」や「サステナビリティ」という言葉が聞かれるようになりました。しかし、どこか捉えにくくしっくりこない「持続可能性」という言葉だけが独り歩きしているという現状もあります。
 授業では、南北格差など持続不可能な現在の世界の状況をいくつかの図で示した後、「持続可能性」が誕生した背景や時代に立ち返ることで、「持続可能性」にアプローチしました。1960年代から現在まで地球サミットなどを舞台にどのように持続可能性やそのための教育の重要性が唱えられてきたのかをパワーポイントで学びました。
 持続可能な社会は、経済・社会・環境の3本柱がバランスよく在ることや、その土台には文化(価値観)があることを説明し恐らくはじめて出会ったであろう世界(社会)観を熱心にノートにとっている学生たちの姿が印象的でした。
 授業後には、説明の中で紹介されたレイチェルカーソンの「沈黙の春」について、
「名前は聞いたことがあったが、読んだことがなかったので読んでみたい」という学生の声も聞かれました。
 次週からは具体的なトピックごと「持続可能性」を考えていきます。


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授業実施日:2011年5月20日
トピック@「地球温暖化・気候変動」

 「持続可能な社会」とは、文化を基盤にして環境・経済・社会がバランスよくつながりあっている社会と言えます。たとえば、経済成長のための過剰な森林伐採や水の採取によって私たち人間の社会は豊かになっても、一方で環境破壊や他の生物の生存を危機に追いやってしまっているかもしれません。
 このような状況を「持続不可能」な社会と言います。

 今日は、持続可能な社会をつくるための柱のひとつである、「環境」を中心テーマに据え、その一例として地球温暖化・気候変動について学生3人が発表しました。

 地球温暖化はなぜおこるのか、私たちと環境はどのように繋がっているのかを学びあいました。「地球データマップ」の中でも映像が紹介され、又、発表の中でも触れられた「ツバル」という島。
 南太平洋に浮かぶこの島は、地球温暖化の影響で海面が上昇し、地球上で最も早く海に沈む国家であると言われています。島が沈むということは、ただ地図からその名前が消えるだけでなく、そこに在った文化や歴史、多くの人々の営みが消えてしまうということにもつながります。
 授業では、こうしたケースの他、マクロなデータについて扱っている『スターン報告』などについても学びました。私たちの生活が地球何個分の「豊かさ」を享受した上に成り立っているのかを表す指標としてエコロジカル・フットプリントがあげられます。アメリカをはじめとする先進国が「踏みつけている」度数と途上国のそれとには大きな隔たりがあり、この格差をどうするのかが重要課題であることを共有しました。
 「先進国日本」として、私たち一人ひとりがどのように生活じたいを考え直し行動していくのかが大切でるという学生の声も聞かれました。


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授業実施日:2011年5月27日
トピックA『平和と暴力』

「世界がもし100人の村だったら」という本を知っていますか?
この本には、世界の人口63億人を「100人の村」に見立て世界の様々な現状が描かれています。
 たとえば、
 100人のうち、52人が女性です。48人が男性です。
 30人が子どもで、70人が大人です。
 2人がコンピューターをもっています。
 けれど、14人は文字が読めません。

 今日の授業では、最初にこの本を用いて全員でクイズを行いました。クイズを少し紹介します。考えてみてください。
クイズ:○に入る数字を考えてみましょう
(世界がもし100人の村だったら)
 1.子どもは28人です。そのうち○人は働いています。
 2.○人は小学校に行っていません。
 3.若者は18人です。○人は大学に通っています。
答え
 1.4人
 2.12人
 3.2人
 (参考:池田香代子+マガジンハウス『世界がもし100人の村だったら完結編』 マガジンハウス)

クイズの後、担当学生による発表が行われました。今日のテーマは「平和と暴力」です。

 学生たちはこれまでにどのような戦争がおこり、今も行われているのかについて資料を使いながら説明しました。
 今日の発表の中で印象的だったのは「構造的暴力」という言葉です。
これは、1970年代にノルウェーの社会学者、ヨハン・ガルトゥングによって提唱された概念です。戦争などの加害者が誰であるかが特定できる「直接的」な暴力ではなく、加害者が不明確な暴力行為を示しています。具体例としては人種差別、飢餓、貧困などで、社会構造が起因で起こる「構造的」な暴力とされています。
 ガルトゥングは、例え直接的な暴力はなくても自身の才能の開花を妨げる何らかの要因がある社会は「平和」な社会ではないといいます。
 また学生たちには自分たちが生活することと、遠くでおこっている紛争が関わっていることを考えてもらい、本当の「平和」について捉え直すきっかけとなるようにしました。


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授業実施日:2011年6月3日
トピックB『エネルギー、持続可能な未来へ』

今回の授業では「エネルギー」について担当の学生3名から発表がありました。
エネルギーと聞いて、いま真っ先に思い浮かぶのは「原発」ではないでしょうか。
授業内で、学生に対し「原発に反対か、賛成か」と質問を投げかけたところ、20名中反対は3名、その他の学生は賛成ではなく「わからない」という答えでした。
授業は原発反対・賛成のどちらかに対する答えを出そうというものではなく、日本以外の国ではどのようなエネルギー事情になっているのか、日本はどうやってエネルギーを賄っているのかなど、基本情報を中心に学びました。
エネルギーというテーマに学生たちの関心は高く、熱心にノートをとっている様子が印象的でした。

■エコリュックという言葉を聞いたことがありますか?
金属などの自然資源を地中から取り出し、私たちの暮らしの中で使えるようになるまでにかかった「見えない環境負荷」をわかりやすく数値化したのが、このエコリュック(エコロジカル・リュックサック)です。
金属は、私たちがつかっているような姿で地中から取り出すことはできません。金属などの資源を取り出すために、原生林を切り開くことによる自然破壊、環境汚染、製錬に伴うエネルギー消費など、目には見えない多くのエネルギー消費を経て私たちのもとに届きます。私たちがどれくらいの「負荷」を背負っているのかを数値化したものが、エコリュックサックなのです。

 人間の文化的生活や生産に欠かせないエネルギー。持続可能な社会であるために、エネルギー問題を解決することは喫緊の課題であるといえるでしょう。学生たちは、自分たちの生活を支えるエネルギーについて、立ち止まって考えているようでした。


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授業実施日:2011年6月10日
トピックC『食と農−遠くからくる食べ物−』

私たちは「食べ物」なしに生活することはできません。 今日のテーマは「食」でした。発表は、世界と日本の食事情を柱に進められました。

世界では、5秒に1人の割合で子どもが餓死しているといわれます。日本には毎日捨てるほど食べ物があるのに、なぜこのような不平等がおこってしまうのでしょうか?
そんな「飽食」国家、日本ですが、食糧自給率はわずか41%(平成21年度)と先進国の中でも最低です。日本は食べ物の多くを貿易に依存しており、日本で消費される食糧の60%が海外からやってきています。自給率の低さ、そして海外に依存した食生活の何が問題なのでしょうか?

『フードマイレージ』という言葉を知っていますか?
私たちの目の前にある食べ物がどれだけ遠くから運ばれてきて、そのためにどれだけの二酸化炭素を出しているのかを算出したものです。食べものの量×運ばれてきた距離で求めることができます。
フードマイレージを通して見えてくるものは距離だけでなく、環境への負荷もです。
学生から「今まで自分が食べているものがどこから来て、誰が作っているかなんて考えたことがなかった。食に無関心すぎた」という声がありました。
私たちは、食べたい時に食べたいものを選んで食べられる社会に暮らしています。しかし、私たちの食生活は多くの負荷の上に成り立っているのが現状です。身近な「食」というテーマに、質疑応答の時間も活発に意見を述べている学生の姿が印象的でした。


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授業実施日:2011年6月17日
トピックD『文化の多様性―失われゆく言語―』

もし日本語がなくなったら・・・
そんなことを考えたことがあるでしょうか?
今回の授業では、実際に消滅の危機に瀕している言語、いわゆる「危機言語」について、学びました。


(出典:NHK『地球データマップ』NHK出版)

上の世界地図の中にある黒い点は、その地域特有の言語を示しています。日本の中だけでも、数個の黒い点をみることができます。
このように、世界では現在約7000語が話されており、そのうち2500言語が消滅の危機に、そしてそのなかでも約500語は極めて危険な状態とされています。
危機言語が生まれる背景には、言語を話す民族や人々に対する差別や偏見が要因のひとつとして挙げられます。差別や偏見を受けてしまうために固有の言語を話すことが恥ずかしくなり、言葉を使うことを辞めてしまうのです。
「アイヌ語」が危機言語として指定されている背景にも、そのような要因があるとされています。現在、アイヌ語の話者は15人しかいません(2009年)。
言語が消滅してしまうということは、文化がひとつ消滅するということに繋がっています。
「言葉がなくなるなんて考えたことがなかった。日本の童謡や絵本を子どもに伝えられなくなるのは悲しい」という学生の声が印象的でした。


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授業実施日:2011年6月24日
トピックE『生物多様性―滅びゆく野生生物―』

オゾン層にあいた穴をどうやってふせぐのか、
あなたは知らないでしょう。

死んだ川にどうやってサケを呼びもどすのか、
あなたは知らないでしょう。

絶滅した動物をどうやって生きかえらせるのか、
あなたは知らないでしょう。

そして、今や砂漠となってしまった場所にどうやって森をよみがえらせるのか、
あなたは知らないでしょう。

(出典:学陽書房『あなたが世界を変える日』セヴァン・カリス=スズキ)

1992年6月11日、ブラジルのリオデジャネイロで国連地球環境サミットが行われました。
当時12歳だったセヴァン=スズキはそのサミットで各国首脳や代表を前に「伝説のスピーチ」を行い、大きな感動と衝撃を人々に与えました。

このサミットで議論の中心となったのは「環境」と「生物多様性」でした。
今回の授業では、その柱のひとつ「生物多様性」について学び合いました。

この地球には多くの生物が生息し、「いのちのにぎわい」の中で私たちも暮らしています。
その存在に気が付かないような小さな動植物でも、その存在を失ったときはじめて私たちの暮らしに関わる重要な存在であったと気付くのかもしれません。
昨年日本で行われたCOP10「生物多様性条約第10回締約国会議」に続き、今年は「国際森林年」、そして来年はリオデジャネイロで再び「地球サミット」が開催されます。
次世代を担う学生一人ひとりが、地球と向き合った時間となりました。

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