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中古文学 (Verson:3.01)

 

  平安時代の文学作品のことを、中古文学と言う。具体的には、8世紀末の平安京遷都から12世紀末の鎌倉幕府成立までの400年間を指す。中国大陸の文化の影響を受けながら、徐々にそれを取り込み、日本独自の文化を生み出していった時代である。

  この時代、かな文字の発明という画期的な出来事が起こった。それにより、漢字では十分に表現し尽くせなかった細かな心情の揺らぎを自在に記すことが可能になり、多様なジャンルの文学が花開いたのであった。中古文学の担い手は都に住む貴族たちであったが、とりわけ女性がこのかな文字を駆使して活躍したのも、この時代の大きな特徴であろう。その作品は、『源氏物語』『枕草子』など我々に馴染み深いものが多い。

  中古文学は様々に後世の規範となり、それゆえ研究史も分厚いのだが、以下では基礎的文献のみを紹介する。


テキスト・注釈書】

   ほとんどの作品については、以下のシリーズに収められている。

  ○『新編日本古典文学全集』88冊 2002 小学館

    [詳細な頭注に現代語訳を付す。巻末資料も充実。]

  ○『新日本古典文学大系』105冊 2005 岩波書店

    [脚注を付す。八代集、説話なども採録。]

  ○『新潮日本古典集成』82冊 1989 新潮社

    [頭注を付す。一部の現代語訳を傍注の形で示す。]

  ○『和歌文学大系』81冊予定 刊行中 明治書院

    [万葉集から近代和歌まで。脚注に大意・語釈・鑑賞を記す。]

  

   主要な作品については、個別のテキスト・注釈書が刊行されていることも多い。
以下にその一例を挙げる。

  ○片桐洋一『古今和歌集全評釈』3冊 1998 講談社

  ○大井田晴彦『竹取物語 現代語訳対照・索引付』2012 笠間書院

  ○片桐洋一『伊勢物語全読解』2017 和泉書院

  ○上村悦子『蜻蛉日記解釈大成』9冊 1995 明治書院

  ○室城秀之『うつほ物語全 改訂版』2001 おうふう

  ○萩谷朴『枕草子解環』5冊 1983 同朋社出版

  ○玉上琢禰『源氏物語評釈』14冊 1969 角川書店

  ○『源氏物語の鑑賞と基礎知識』43冊 1998 至文堂

  ○松村博司『栄花物語全注釈』9冊 1982 角川書店

  

   また、角川ソフィア文庫の「ビギナーズクラシックス」シリーズも、入門として最適である。その他にも多くのテキスト・注釈書があるので、OPAC等で検索してみてほしい。複数の注釈書を比較するのは大事な作業である。いろいろと見比べてみよう。


事典類】

   ここでは、中古文学に特化したものを中心に取り上げる。日本文学全体に共通する事典類の詳細は、「総説」を参照してほしい。


   ことばについて知りたい場合は、『日本国語大辞典』『角川古語大辞典』の他に、
以下のものも参照するとよいだろう。

  ○秋山虔編『王朝語辞典』2000 東京大学出版会

    [王朝文学の解読にとりわけ重要な語彙や事項の解説。]

  ○山口秋穂・鈴木日出男編『王朝文化辞典』2008 朝倉書店

    [古典作品にあらわれる言葉と、その背景にある文化の解説。]

  ○秋山虔・室伏信助編『源氏物語大辞典』2011 角川学芸出版

    [『源氏物語』内の全自立語を立項する語彙辞典。]
  

   さらに、和歌のことばの意味を調べるには、以下の書が有益である。

  ○久保田淳・馬場あき子編『歌ことば歌枕大辞典』1999 角川書店

  ○片桐洋一『歌枕歌ことば辞典 増訂版』1999 笠間書院

  

   文学作品の読解において、背景となる史実への理解は欠かせない。歴史上の事項について知りたい場合は、『国史大辞典』の他に、以下のものも参照するとよいだろう。

  ○『平安時代史事典』3冊 1994 角川書店

    [「資料・索引編」は非常に有益。]

  ○小町谷照彦・倉田実編『王朝文学文化歴史大事典』2011 笠間書院

    [各項目に対して、作品例や参考文献も示されていて至便。]
  

   また、当時の建物・調度品・装束などの図版を見たい場合には、以下の書が有益である。これらによって具体的なイメージを掴めるようになれば、作品世界をより深く理解できるようになるはずである。

  ○鈴木敬三『有職故実図典』1995 吉川弘文館

  ○秋山虔・小町谷照彦編『源氏物語図典』1997 小学館

  ○倉田実編『ビジュアルワイド 平安大事典』2015 朝日新聞出版


   また、各作品やジャンルごとの専門事典も刊行されている。作品の概要、人物関係、主な研究テーマなどを知りたい時に、概説書と併せて活用してみよう。


   『源氏物語』に関する事典は複数あるが、以下では比較的最近のものを挙げておく。

  ○鈴木日出男編『源氏物語ハンドブック』1998 三省堂

  ○秋山虔・室伏信助ほか編『源氏物語必携事典』1998 角川書店

  ○林田孝和・原岡文子ほか編『源氏物語事典』2002 大和書房

  ○西沢正史編『源氏物語作中人物事典』2007 東京堂出版


   その他の作品・ジャンルについての事典としては、以下のものがある。

  ○『うつほ物語大事典』2013 勉誠出版

  ○『日記文学事典』2000 勉誠出版

  ○『枕草子大事典』2001 勉誠出版

  ○『和歌文学大辞典』2014 古典ライブラリー

    [古典和歌に関する、人名・作品名・用語等の解説。]

用例検索】

   ことばの正確な意味を把握したり、作品内での用語数を分析したりするためには、用例検索の作業が必要となってくる。主要な作品については索引も刊行されているが、以下のデータベースを用いるのが至便であろう。

  ○Japan Knowledge 新編日本古典文学全集検索

    [『新編日本古典文学全集』88冊の頭注・本文・現代語訳を検索できる。]

  ○『新編国歌大観 DVD-ROM版』2012 角川書店

    [万葉集から近世までの和歌を網羅した『新編国歌大観』のDVD版。
   和歌本文のほか、詞書も検索できる。]


入門書・研究書】

   研究の手がかりとなる導入書として、以下のシリーズを挙げておく。

  ○『〜を学ぶ人のために』世界思想社

    [中古文学関係では、
   『王朝物語を学ぶ人のために』、『王朝女流日記を学ぶ人のために』、
   『源氏物語を学ぶ人のために』、『源氏物語と和歌を学ぶ人のために』、
   『王朝和歌を学ぶ人のために』、『和歌史を学ぶ人のために』、
   『王朝文化を学ぶ人のために』、が刊行。]
 

  ○『別冊国文学 〜必携』學燈社

    [中古文学関係では、
   『王朝物語必携』、『竹取物語』、『伊勢物語必携』、
   『王朝女流日記必携』、『源氏物語必携』、『古典和歌必携』、が刊行。]


   なお、主な研究テーマを概観するには、以下の書も有益である。

  ○吉海直人『源氏物語研究ハンドブック』3冊 2001 翰林書房

  ○田中登・山本登朗編『平安文学研究ハンドブック』2004 和泉書院

  

   また、『源氏物語』関連の入門書としては、以下の書がある。

  ○室伏信助監・上原作和編『人物で読む源氏物語』20冊 2006 勉誠出版

    [主要人物ごとに、あらすじ、研究史、関連論文をまとめたもの。]   

  ○高田祐彦・土方洋一『仲間と読む 源氏物語ゼミナール』2008 青簡舎

    [大学の演習で『源氏物語』を学ぶ人たちのためのガイドブック。]   

  ○『源氏物語入門』2008 角川学芸出版


   これ以外にも、手軽な新書・選書による入門書は数多ある。以下はいずれも新書版で、平易に説かれるが、『源氏物語』の核心に触れる内容の書である。

  ○清水好子『源氏の女君』増補版 1967 塙新書

  ○秋山虔『源氏物語』1968 岩波新書

  ○三田村雅子『源氏物語』1997 ちくま新書

  ○日向一雅『源氏物語の世界』2004 岩波新書


   和歌の入門書としては、以下の書が有益である。

  ○谷知子『和歌文学の基礎知識』2006 角川選書

  ○渡部泰明編『和歌のルール』2014 笠間書院


   最後に、研究書に目を通す際には、「講座」「シリーズ」などの論文集から入るとよいだろう。以下にその一例を挙げておく。

  ○秋山虔ほか編『講座 源氏物語の世界』9冊 1984 有斐閣

  ○今井卓爾ほか編『源氏物語講座』10冊 1993 勉誠社

  ○増田繁夫ほか編『源氏物語研究集成』15冊 1998 風間書房

  ○今井卓爾監・石原昭平ほか編『女流日記文学講座』6冊 1990 勉誠社

  ○『歴史物語講座』7冊 1997 風間書房