●現在の研究テーマ

現在、主に以下のような研究に携わっています。
○同一価値労働同一賃金原則にもとづく職務評価と賃金の是正(自治体、図書館)
○若年キャリア形成のジェンダー格差
○NPOと女性のキャリア形成
○人身取引問題と日本人の意識

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●私の研究について

 私の研究は、社会の中で「あたりまえ」と考えられていることに関して、実証的に検証し、実際のところどうなっているかを明らかにすることに力を注いでいます。そして、人々が女性も男性も「自らの尊厳をもって幸せに生きていくことのできる社会」の構築を考える際に、私の研究を考えるきっかけやヒント、さらには考える基礎にしてもらえることを目標にしています。「幸せに生きていくことのできる社会」がどのような社会であるかを私から提示することはあまりしません。それは「幸せ」というものも社会的に構築されているからです。しかし、「幸せ」ではないかもしれない状況はあると考えます。例えば、働くことのなかでも、尊厳を踏みにじられる形で働くこと、同じ仕事をしているのに半分の賃金で働くこと、長時間にわたって働くこと、仕事を辞めたいのに働き続けることなどです。私の他の研究テーマとしては、親から「男の子なのだからがんばれ」と過度に期待されることなども同様に「幸せ」ではないかもしれないと考えます。
 そして、なぜそのような状況にいるのか、なってしまっているのかを考えたとき、ジェンダーによる作用は大きく、人々がこれらの「幸せ」ではないかもしれない状況を受け入れてしまっているのもジェンダーの作用があります。
 私が書いた論文の「雇用不安定化のなかの男性の稼ぎ手役割意識」は、男性だけが稼ぎ手役割をおって、一生懸命働き続けようとすることが社会のなかで「あたりまえ」と考えられ、男性自身も「あたりまえ」と考えていることへの疑問から出発しています。「施設介護職員とホームヘルパーの職務の比較と賃金」は、パートタイマーであるホームヘルパー(女性が大半を占める)の賃金がかなり似た仕事をしている施設介護職員と比べて半分ぐらいであることが、「女性のNPO活動と金銭的報酬―キャリア形成の視点から―」はNPO活動をしている女性の金銭的報酬が極めて低いことがやはり社会のなかで「あたりまえ」と考えられ、女性自身も「あたりまえ」と考えていることへの疑問から出発しています。これらの「あたりまえでないこと」を「あたりまえ」にしているのがジェンダーです。
 そして、「あたりまえでないこと」を「あたりまえ」にしているジェンダーの作用を徹底した実証によって明らかにすることに力を注いでいます。これはジェンダー研究のなかには、指摘したい事柄が先走っていたようなこともなかったわけではなく、私はきちんとした社会調査による分析をもとに説明することを重視しています。さらに、よりより社会の構築にむけてどのような方策があるのか、もしくは個人としてはどのような戦略があるのかを実証研究の知見をもとに提示したいと考えています。
 例えば、「施設介護職員とホームヘルパーの職務の比較と賃金」では「同一価値労働同一賃金原則」の考え方にもとづく賃金の是正の方法、「女性のNPO活動と金銭的報酬―キャリア形成の視点から―」ではNPO活動を行う女性がもつべき金銭的報酬を得るための戦略を論じています。
 つまり、私の研究は、徹底した実証研究によって人々が「幸せ」ではないかもしれない状況を受け入ている社会構想を明らかにし、可能であれば、社会からみた方策と個人からみた戦略を提示することを行っています。社会構造を明らかにする点は私のすべての研究に共通していますが、社会からみた是正方法、方策について論じたのが賃金や人身取引、男女共同参画に関する研究であり、個人から見たよりよい戦略を考えたのが、キャリア形成やNPO活動の研究です。
 ①社会構造を明らかにする、②社会からみた是正方法、方策を提示する、③個人からみたよりよく生きる戦略を提示する、これらが私の研究の立場であり、人々が社会を変革する方向を考える基礎になれればと思っています。

●私の研究と教育活動

 私の研究の目標は先にも述べたように、社会の中で「あたりまえ」と考えられていることに関して、実証的に検証し、実際のところどうなっているかを明らかにすること、人々が「自らの尊厳をもって幸せに生きていくことのできる社会」の構築を考える際に、私の研究を考えるヒント、さらには考える基礎にしてもらうことです。この立場は教育活動においても同様です。私からあるべき社会の姿を学生に提示するのではなく、さまざまな研究や知見を学生に紹介し、学生が自ら「幸せに生きていくことのできる社会」の構築を考えることができるように努めています。
 具体的には、働くことにおける「あたりまえ」に焦点をあて、学生が働くことを切り口にどんな方向に社会を変革する必要があるのか、そのなかで自分はどう生きていくのかを考えられるようにしています。また、ジェンダー構造やジェンダーの作用についても学び、自分の今までの人生を振り返ると共に、これからの人生をより自由に考えることができるようになって欲しいと思っています。また、ジェンダーの作用は男性、女性に対してあること、女性はジェンダー構造のなかで男性より不利ではあるが、別の視点からみれば男性もジェンダー構造のなかで大変な状況があることを伝えるようにしています。女性、男性の両方の立場を理解してこそ、はじめて変革すべき社会の方向は見えてくるのではないかと考えるからです。
 さらに、学生が社会構造を理解したうえで、自分の人生をよりよく生きていくための戦略を考えられるようにしています。キャリア形成について研究しているのも、学生がよりよく生きていくために個人としてできることを明らかにしていきたいと考えるからです。いまある社会構造のなかでどんな戦略を持って個人としてどうよりよく生きるか、この点を学生と共に考えていけたらと思っています。
 学生が、①社会構造を知り、②社会を変革する方向性を考え、③そのなかで個人としてどう生きるのか考えることが、私が自分の研究活動と教育活動の連鎖の中で最も重視し、果たしたい義務と考えています。