2009.11.24

カンボジアの大型影絵芝居「スバエク・トム」
レクチャー&デモンストレーション開催(於:宮代ホール)

 11月24日、社会文化学専攻(大学院)・国際交流専攻(学部)の共同主催で、カンボジアの大型影絵芝居「スバエク・トム」のレクチャー&デモンストレーションが行われました。財団法人現代人形劇センター主催の招聘公演のために来日した「ティ・チアン一座」から数名に来校してもらって実現したものです。
 スバエク・トムは、国内でもあまり注目されてこなかった地方芸能でしたが、2005年にユネスコにより「無形文化遺産」に登録されて以来、徐々に知名度を上げています。大学では、国際交流専攻2年生が「国際交流カップ」で文化遺産をテーマとして取り上げたところでもあり、タイムリーな講座となりました。学部生と大学院生、先生方合わせ約250名の参加が得られました。
 座長のチアン・ソパーン氏(30才)他3名の遣い手と楽士1名、総勢5名による講座は、まずソパーン氏による、一座の成り立ちと現状についての説明で始まりました。内戦のためにスバエク・トムの伝統が長い間途切れていたこと、1997年に復活した一座が、当時座長だった故ティ・チアンの指導で地域の人々や観光客に支持されるレベルまで成長したことなど。ソパーン氏は、祖父ティ・チアンの教えを引き継いでこの芸能を続けるつもりだと語りました。

 次に、ソンポー(両面太鼓)とスロライ(リード楽器)の生演奏とCD録音の曲を使用しての実演。一節の語りのあと音楽に合わせた遣い手の動きが続くという一連の動きを、いくつかの場面で示してもらいます。その後、手足が動くよう細工したいわゆる「人形」とは異なり、一枚の図のような形をしたスバエク・トムがどのように場面や感情を表現するのかを、基本姿勢、動かし方、演じる際の演者の精神状態、音楽との調和といった点から解説してもらいました。
 希望者がスバエクの人形をもって遣い方を体験する時間も設けました。人形の掲げ方、目線、呼吸を整えて「人形と息を合わせる」といった説明を受けながらの体験には、学生だけでなく先生方からの参加もありました。実際に動かすのは見るよりも難しい様子が客席からでもわかるようで、楽しい笑いも湧きました。この他、スロライ奏者による演奏で、長期訓練を要する「循環呼吸」の技が披露されるなど、カンボジア芸能のさまざまな面を知る講座となりました。
 出席した学生からは、多くのコメントが寄せられました。目立ったのは「影絵芝居からイメージするものを超えた、大きくかつ繊細な人形に驚いた」、「手足の動かない人形なのに、曲と遣い手の動きで登場人物の心情を表すことに驚いた」など、演技に対する感想です。代々伝えられてきた上演方法を変えないという一座の説明に対し、「形を変えずに引き継がれるものこそ伝統芸能のあり方だと感じる」「伝統を保存していくことは、その国の人々のアイデンティティを守ると同じことではないか」といった賛同や、「変わらないままでは若者の賛同は得にくく廃れる可能性もある。多少の寛容をもって再生することも必要では」といった考えなども数々出ました。20~30代の若手が中心となって一座を構成していること、以前は禁止されていた女性の上演参加が現在は許されていて今回来日した女性演者が18歳であることも、伝統の継承という事柄を身近な問題として捉える要因になったようです。
 短い時間でしたが、実際に見て伝承者の声を直に聞くことで、この芸能に対する理解を深めただけでなく、また他の国の文化に関心をもつための手助けになったのではと思います。
 社会文化学博士後期課程2年 福富友子(当レクチャーのコーディネートと通訳)

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