【学位論文(聖心女子大学大学院修士課程修了)】
1. 薊理津子 (2006) 恥と罪悪感の機能についての検討-Tangneyのshame、guilt理論を基に-.
 近年の欧米での研究においてguiltは道徳的感情で適応的に人々を導くが、shameは非道徳的感情で不適応的に人々を導くと示唆されている。本論文では、この議論が本邦の恥と罪悪感にも適用できるのかどうかについて実証的に検討した。その結果、屈辱的恥が不適応的機能を有し、罪悪感が適応的機能を持つことが示された。つまり、恥と罪悪感の対比というよりも、屈辱的恥と罪悪感の対比で、欧米の知見が支持された。

【学位論文(聖心女子大学大学院社会文化学専攻博士後期課程修了)】
2. 薊理津子 (2010). 屈辱感の心理的影響及び喚起要因に関する検討.
 2009年業績にアブストラクトが掲載されているので、そちらを参照してください。

【査読論文・単著】
3. 薊理津子 (2008). 恥と罪悪感の研究の動向.感情心理学研究,16,49-64.
 これまで恥と罪悪感は類似した情動と見なされていたが,近年の研究から恥が不適応的,罪悪感が適応的であるといった,それぞれ異なる性質を持つことが明らかにされてきている。本論では,近年の恥と罪悪感に関する研究をレヴューした。そして,応用的研究の展望として、恥と罪悪感の予期による逸脱行為の抑止という点から教育への応用と、恥と暴力に関連するテーマとして近年論じられるようになってきた屈辱感について述べた。

4. 薊理津子 (2010). 屈辱感,羞恥感,罪悪感の喚起要因としての他者の特徴. パーソナリティ研究,18,85-95.
 他者の特徴(叱責者)が,屈辱感,羞恥感,罪悪感の喚起に及ぼす影響について検討を行った。その結果,嫌いな人間に叱責されると屈辱感、機嫌を損ねたくない人間に叱責を受けると羞恥感、さらに,好かれたい人間に叱責されると罪悪感が喚起された。また,構造方程式モデリングの結果,叱責者の違いが直接関係修復反応に影響を与えるのではなく,それらの間に罪悪感と屈辱感の感情が媒介することが見出された。羞恥感は叱責者と周囲他者から,道徳基準で低い評価を受けたと認知すると生じやすかった。

【査読論文・共著】
5. 永房典之・菅原健介・佐々木淳・藤澤文・薊理津子 (2012). 厚生施設入所児の公衆場面における行動基準に関する研究, 心理学研究, 83, 470-478.
 本研究では1296名の厚生施設入所児を対象として、少年非行と行動基準との関係を明らかにした。因子分析の結果、行動基準には公共価値、自分本位、地域的セケン、仲間的セケン、他者配慮の5因子がみられた。クラスター分析から、非行経験は虞犯と犯罪の2つのクラスターに分かれた。そして、非行経験のある厚生施設児は、非行経験のない厚生施設児よりも自分本位や仲間的セケンの行動基準得点が高かった。以上から非行研究における公衆場面の行動基準の重要性が議論された。

【紀要】
6. 薊理津子 (2006). 恥と罪悪感の機能の検討-Tangneyのshame,guilt理論を基に-. 聖心女子大学大学院論集,28,77-96.
 本論文は、2006年に聖心女子大学大学院文学研究科社会文化学専攻に提出した修士論文の一部である。

7. 薊理津子 (2007). 屈辱感・羞恥感・罪悪感の関連要因の検討-他者要因と道徳基準・優劣基準の視点から探る-.聖心女子大学大学院論集,29,89-105.
 批判を受けるなどの社会的苦境場面から生じる感情に屈辱感、羞恥感、罪悪感の3つの感情があり、それぞれ異なる心理的機能を有する。本論では3つの感情を分岐する要因について検討した。その結果、他者から優劣基準で低い評価を受けると屈辱感が生じ、一方、道徳基準で低い評価を受けると罪悪感が生じることが示された。

8. 薊理津子 (2008). 大学生における屈辱感が喚起される状況.聖心女子大学大学院論集,30,115-129.
 攻撃行動など多くの社会的問題に関連している屈辱感が生じる状況を収集、整理した。その結果、屈辱感は対人場面において喚起されることが多く、また、喚起要因として「劣位者としての扱い」「失態・見られたくない姿の露出」「敗北・能力の低さの自覚」「裏切り」「批判・叱責」「大切にしている人・モノ・考え・信念への侮辱や否定、傷つけ、不理解」「責任転嫁・理不尽的批判」「追放・孤立」の8つのカテゴリーに分類された。

9. 薊理津子 (2009). 屈辱感・羞恥感・罪悪感の状態尺度と,恥,罪悪感の特性尺度との関連性の検討. 聖心女子大学大学院論集,31,95-108.
 恥を屈辱感と羞恥感とに分け、それに罪悪感を加えた屈辱感、羞恥感、罪悪感の状態尺度と、恥と罪悪感の特性尺度との関連性について検討を行った。その結果、羞恥感と罪悪感は恥と罪悪感の特性尺度との間に類似した相関のパターンを示した。つまり、屈辱感は羞恥感と罪悪感とは異なる性質を持っていることが示唆された。

【紀要・共著】
10. 菅原健介・永房典之・佐々木淳・藤澤文・薊理津子 (2006). 青少年の迷惑行為と羞恥心-公共場面における5つの行動基準との関連性-. 聖心女子大学大学院論叢, 107,160-180.
 平成16年度厚生労働科学研究費補助金、子どもと家庭を対象とした総合評価票の開発に関する研究(平成16-17年度 代表研究者 菅原ますみ)によって行われた。
 近年、公共場面における迷惑行為の増加が問題とされており、その背景に、都市化という社会環境の変化が考えられる。本研究では公共場面で採用される行動基準を明らかにし、それらと迷惑行為との関連性について検討を行った。その結果、自分の利益を優先させる、仲間の行動に同調するといった行動基準を採用しているほど迷惑行為は促進された。

11. 小城英子・薊理津子・小野茜 (2010). スキャンダルとファン心理. 聖心女子大学大学院論叢, 114, 166-200.
 本研究は認知的不協和理論の視点から、スキャンダルとファン心理について検討を行った。不倫、麻薬、暴行、脱税の4種類のスキャンダルのシナリオを使用し、スキャンダル前後の感情と行動を尋ねた。その結果、不倫スキャンダルは許容される傾向が認められたが、麻薬スキャンダルは許容されにくい傾向が認められた。また、作品を評価しているファンと情緒的関与の強いファンはスキャンダルを許容する傾向が示された。

【書籍】
12. 薊理津子 (2008). Topic4 屈辱感. 永房典之(編), なぜ人は他者が気になるのか?-人間関係の心理. 金子書房. pp.58-59.
 現代人の対人心理、とりわけ他者を気にする様々な場面での認知・感情・行動を説明した本である。筆者は「Topic4 屈辱感」において、屈辱感の心理的機能について述べた。

13. 薊理津子 (2009). 8章 屈辱感と共感的羞恥. 菊地章夫,有光興記(編), 自己意識的感情 北大路書房 pp.142-159(内,「屈辱感」担当pp.142-152)
 対人場面で自己意識を介在して経験される感情である恥や罪悪感、妬みなどの自己意識的感情について、これまでの研究知見を総括し、今後の展望を示唆した本である。筆者は「8章 屈辱感と共感的羞恥」を共著者と分担し、その内「屈辱感」を担当した。

14. 薊理津子 (2011). コラム5 恥の生起過程. 生駒忍(編), ひろがる認知心理学 三恵社 pp.62-63.
 認知心理学の知的過程、コミュニケーション、感性、感情、臨床心理、発達について、古典的な研究から新しい研究知見を紹介する本である。筆者は「コラム5 恥の生起過程」において、恥と罪悪感とを比較しながら、どのような要因が恥を生起させるのかについて述べた。

15. 薊理津子 (2012). 12章 パーソナリティと自己意識的感情. 鈴木公啓(編) パーソナリティ心理学概論 ナカニシヤ出版 pp.131-140.  本書は教科書として使いやすい、パーソナリティ心理学の基礎的な内容を広く網羅し、遺伝やコヒアランス、老年期など、新しいテーマを積極的に組み込んでいる。筆者は「第12章 パーソナリティと自己意識的感情」である。恥や罪悪感を代表とする自己意識的感情の感じやすさと適応との関係について、対人関係と精神的健康の観点から紹介した。そして、どのようなパーソナリティが自己意識的感情と関連するのかについて述べた。

【学会発表(小講演)】
16. 薊理津子 (2010). 屈辱感の心理的影響及び喚起要因の検討.  日本心理学会第74回大会発表論文集, L(15).
 本発表は、2009年に聖心女子大学大学院文学研究科社会文化学専攻に提出した博士論文の一部である。

【学会発表(ポスター・口頭)】
17. 薊理津子・余語真夫 (2003). 自己意識感情(恥・罪悪)と怒り・攻撃性との関係. 日本感情心理学会第11大会プログラム・予稿集,15.
 欧米の研究から、恥傾向が怒り・攻撃性を促進し、罪悪感傾向が怒り・攻撃性を抑制することが示されている。本研究では、この知見について、TOSCA-3を用い、日本人大学生を対象に追試した。その結果、先行研究を支持するものだった。恥と罪悪感は自己意識感情として同類に扱われるが、その機能に相違があることが示唆された。

18. 薊理津子 (2004). Test of Self-Conscious Affect-3の「恥」「罪悪感」研究への適用可能性の検討. 日本社会心理学会第45回大会発表論文集, 430-431.
 欧米ではTOSCA-3がshameとguiltの測定にしばしば使用されている。本研究では、本邦におけるTOSCAの妥当性について検討した。その結果、TOSCAで測定しているshameとguiltが本邦の恥と罪悪感に必ずしも対応しているとは示されず、本邦で使用するには不適当であることが示唆された。

19. 薊理津子 (2005). 恥,罪悪感に関するTangney理論の検討.  日本社会心理学会第46回大会発表論文集,556 -557.
 恥と罪悪感の心理的機能について検討した。その結果、屈辱感に代表される恥の意識は怒り、逃避、他者への責任転嫁を促進し、不適応的であった。一方、罪悪感は修復行動や他者配慮を促進し、怒りや他者への責任転嫁を抑制し、罪悪感は適応的であった。しかし、罪悪感は恥より自身の行為も人格も同時に責める態度が強かった。罪悪感は自己へ帰属してしまうことと、他者志向的であるため修復行動が促されると捉えることができる。

20. 薊理津子 (2006). アルバイト場面における屈辱的恥,羞恥感,罪悪感の機能. 日本社会心理学会第47回大会発表論文集,336-337.
 他者に迷惑をかけて叱責を受けた状況について、アルバイト経験者を対象に半構造化面接調査と質問紙調査を行った。その結果、屈辱的恥は、他者への怒りや他者へ責任転嫁を促す不適応的感情であり、一方、罪悪感は他者への謝罪を促す適応的感情といえた。また、羞恥感は評価懸念と関連していた。そして、屈辱的恥は、「人格」が批判されたという認知と、罪悪感は「失敗(行為)」が批判されたという認知と関連していた。

21. 薊理津子 (2007). 社会的苦境場面における自己意識感情(屈辱感・羞恥感・罪悪感). 日本社会心理学会第48回大会発表論文集,334-335.
 注意・叱責を受けるなどの社会的苦境場面で生じる屈辱感、羞恥感、罪悪感を分岐する要因について、他者の特徴という視点から検討した。その結果、嫌いな他者に注意・叱責を受けるとき、屈辱感が喚起されやすい、一方で、好かれたい他者に注意・叱責を受けると、罪悪感が喚起されやすい。羞恥感は嫌われたくない他者に注意・叱責を受けた場合に喚起されやすかった。

22. Azami, R. (2008). Humiliation, embarrassment and guilt in Japanese part-time job.
X X IX International Congress of Psychology, Berlin.
 アルバイト経験のある学生92名に、アルバイト中、叱責を受けた経験やその経験によって生じた恥や罪悪感の感情について半構造化面接と質問紙調査を行った。因子分析の結果、屈辱感、羞恥感、罪悪感の3因子が抽出された。そして、屈辱感は怒りなどの不適応的特徴と関連し、一方、罪悪感は謝罪などの適応的特徴と関連を持っていた。

23. 薊理津子 (2008). 自己愛と屈辱感,羞恥感,罪悪感との関係性. 日本パーソナリティ心理学会第17回大会発表論文集,70-71.
 屈辱感、羞恥感、罪悪感と自己愛との関係性を探索的に検討した。なお、自己愛以外に、自己意識、賞賛獲得・拒否回避欲求、また精神的健康の指標として自尊心との関係性についても検討した。その結果、有能感が高い人間は、屈辱感が喚起されやすいと示唆された。また、屈辱感は公的自己意識が高いほど生じやすく、羞恥感と罪悪感は全ての特性と関連性が見られなかった。

24. 薊理津子 (2008). 屈辱感・羞恥感・罪悪感の構造. 日本社会心理学会第49回大会発表論文集,510-511.
 屈辱感、羞恥感、罪悪感の構造を確認し、心理的機能について検討した。その結果、恥は屈辱感と羞恥感の2つに分かれると示された。そして、屈辱感を感じるほど、不当な扱いを受けたという意識、排斥不安、自己不全感、身体反応が強められた。また、羞恥感を感じるほど、身体反応、排斥不安が強くなった。罪悪感を感じるほど、自責感、道徳的逸脱意識、自己不全感が高まるが、不当な扱いを受けたという意識は抑制された。

25. 薊理津子 (2009). 自己愛と屈辱感,羞恥感,罪悪感との関係性2. 日本社会心理学会第50回大会発表論文集,768-769.
 自己愛の過敏型と誇大型と屈辱感、羞恥感、罪悪感との関連性について検討した。その結果、過敏型自己愛は3つの感情を促進させるが、特に屈辱感を強く生じさせた。つまり、他者からの評価に関係なく高い自尊心を維持する自己愛者ではなく、他者からの評価によって自尊心を維持する自己愛者は屈辱感を感じやすく、不適応的反応が導かれることが見出された。

26. Azami R. (2010). Relationship between humiliation, shame and guilt and narcissistic personality. 27th International Congress of Applied Psychology in Melbourne, AUSTRALIA, 106.
 本研究では屈辱感、羞恥感、罪悪感の3つの自己意識感情と、自己愛の誇大型と過敏型との関連性について明確化することを目的とした。その結果、自己愛の過敏型は屈辱感、羞恥感、罪悪感を促進したが、特に屈辱感の喚起に強い影響を与えた。また、自己愛の誇大型は羞恥感と罪悪感を抑制した。

17. 薊理津子 (2010). 屈辱感,羞恥感,罪悪感と評価基準との関連性. 日本社会心理学会第51回大会発表論文集, 386-387.
 他者からのどのような基準で評価されたと認知したかという評価基準と、屈辱感、羞恥感、罪悪感との関連性について検討を行った。その結果、屈辱感は、優劣基準で低い評価を受けたと認知すると生じやすく、羞恥感は道徳基準で低い評価を受けたと認知すると生じやすかった。また、罪悪感は世話になる相手への心理的負債感から生じる可能性が考えられた。

28. Azami R. (2011). Causes of humiliation. International Society for Research on Emotion in Kyoto, JAPAN, 266.
 先行研究から、屈辱感が攻撃的行動や抑うつなどの精神病理を強め、心理的また社会的不適応を導くと示唆されている。本論では、屈辱感の喚起要因を見出すために、状況的(他者との関係性)、認知的(評価基準)、パーソナリティ(自己愛)の観点から研究を行った。その結果、状況的要因では「嫌いな他者」、認知的要因では「優劣基準」での低い評価、パーソナリティ要因では「過敏型自己愛」が屈辱感を生じさせることが示唆された。

29. 薊理津子 (2011). 状況別屈辱感尺度の作成 日本パーソナリティ心理学会第20回大会発表論文集, 97.
 多くの研究者が共通して用いる屈辱感を測定する尺度は現状ではない。ゆえに、本研究では、屈辱感を測定する尺度を作成した。屈辱感を感じる状況を収集し、分類した薊の研究(学術論文・査読なし7)を基に、66項目を作成した。因子分析を行ったところ、「裏切り」「否定的評価因子」「失態の露呈」「劣位」「理不尽」「敗北」「個人情報の露呈」「大切なモノに対する侮辱」の8因子が抽出された。これらと自意識尺度との関係性を見たところ、「個人情報の露呈」以外の全ての因子は、公的自意識との間に有意な正の相関が認められ、私的自意識は全ての因子と無相関であった。

30. 薊理津子(2011)自己愛の2側面(過敏型・誇大型)と屈辱感との関連性の検討 日本社会心理学会第52回大会発表論文集, 346.
 本研究では、屈辱感と自己愛の下位因子との間の関連性を検討した。②で作成された尺度、NVS(上地・宮下, 2009)、NPI(小塩, 1998)を用いて検討を行ったところ、特に潜在的特権意識と承認・賞賛過敏性、注目・賞賛欲求が、多くの屈辱感を感じる状況と関連した。つまり、これらの自己愛の下位因子が多くの状況で屈辱感を感じやすいといえる。

31. 薊理津子(2012) 屈辱感の適応的機能に関する検討 日本パーソナリティ心理学会第21回大会発表論文集, 124.
 進化論的観点から、屈辱感は優劣を競う競争場面において適応的に機能する可能性が考えられる。本研究では優劣を競う場面としてレポートの成績で友人よりも低い点を取るという場面を呈示し、屈辱感を感じる程度、その後の学業への取り組みについて尋ね、屈辱感とその後の学業への取り組みとの間の関連性を検討した。その結果、屈辱感はその後の学業努力と学業放棄のどちらも促進することを示した。

32. 薊理津子(2012)自己愛の2側面(過敏型・誇大型)と屈辱感との関連性の検討(2) 日本社会心理学会第53回大会発表論文集, 218.
 本研究では、達成脅威場面と、対人関係脅威場面との2つを設定し、屈辱感と2つの自己愛との間の関連性を検討した。場面の操作が失敗したため、場面をどのように認知したのか(場面に対する認知)を問題とし、全ての場面を一まとめにして分析を行った。屈辱感は承認・賞賛過敏性から僅かながら直接的に影響を受けるものの、自己愛から直接的な影響を受けるというよりも場面に対する認知を媒介して影響を受けることが示された。

33. Azami R.(2013)The power of humiliation to overcome a predicament: an empirical investigation. International Society for Research on Emotion in Berkeley, USA, 46.
 従来の動機づけ研究において、ポジティブ感情が目標に向かう動機づけである接近動機を高め、ネガティブ感情は抑制に働くと考えられてきた。しかし、進化論的観点から、競争場面において、劣位者に優位性の獲得を目指すよう動機づけた感情がネガティブ感情である屈辱感であると指摘されている。本研究は屈辱感が接近動機を高めるための調整変数として自己効力感を仮定し、これを検証した。しかし、自己効力感が調整変数として働くことを見出すことはできなかった。

34. 薊理津子(2013)屈辱感をバネにする要因の探索的検討 日本パーソナリティ心理学会第22回大会発表論文集, 173.
 本研究では屈辱感を感じたことで苦境を乗り越えた経験を収集した。そして、テキストマイニングを利用し、屈辱感が個人の成長へと導く行動を動機づける要因を探索に検討した。その結果、競争的場面での劣位的立場に陥るという状況、そして、その原因を統制可能な内的原因に帰属することが、屈辱感をバネにする要因として示唆された。

【学会発表(ワークショップ)】
35. 薊理津子 (2005). 日本心理学会第69大会ワークショップ 「恥と罪悪感を測る-TOSCAをめぐって-」(話題提供者)
 欧米では、恥と罪悪感の研究にTangney(1990)によるTOSCAが多く使用されており、わが国でも翻訳し使用とする研究がいくつか登場した。そうした研究から、恥と罪悪感の特徴が明確にされたが、信頼性、妥当性について疑問視する声もあがった。このワークショップでは、TOSCAについて議論した。

36. 薊理津子 (2007). 日本心理学会第71大会ワークショップ「道徳的感情と行動-恥(shame)・羞恥感(embarrassment)・罪悪感(guilt) -」(企画・話題提供者)
 近年、社会の変化に伴い、犯罪や青少年の非行が問題化されており、道徳性の低下という観点から述べられることが少なくない。本WSでは,情動的側面からアプローチする研究者に最新の研究データとともに議論を行う。具体的には、恥,羞恥感と罪悪感を取り上げる。

37. 薊理津子 (2007). 日本心理学会第71大会ワークショップ「自己意識的感情:向社会的・反社会的行動との関係」(話題提供者)
 近年、国内でも自己意識的感情についての関心が高まりつつある。今回は共感性、恥、罪悪感について、向社会的行動と反社会的行動との関係から議論した。

38. 薊理津子(2008). 日本教育心理学会第50回総会自主シンポジウム「道徳的感情と行動2:教育場面における恥感情の応用可能性はあるのか?」(企画・司会)
 近年、犯罪や青少年の非行、それに加え、公共の場での迷惑行動などが取り沙汰されることが多い中、これらの行動を引き起こす原因として、道徳性や規範意識の低下だけでなく恥感情の低下について指摘されることが多い。恥感情は道徳的感情の1つとして考えられているだけでなく、特に本邦においては恥感情が人々の問題行動の抑制を規定する重要な感情だと考えられている。

39. 薊理津子 (2009). 日本感情心理学会第17回大会ワークショップ「ネガティブ感情のはたらき」(話題提供者)
 人間関係におけるネガティブ事象の開示・コミュニケーション、屈辱感・羞恥感・罪悪感の機能、ネガティブ気分とタスクの解決など、新たな観点からネガティブ感情について討論した。

40. 薊理津子・菅原健介 (2012). 日本パーソナリティ心理学会第21回大会自主シンポジウム「自己制御規範の心理学―3次元自己制御モデルの観点からの議論―」(話題提供者)
 自己の行動を制御する規範には、社会・集団・個人の3次元がある(山岡,2008)。このシンポジウムは、この3次元を再検討し、さらなる展開の可能性を探る。

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