聖心女子大学の奥行きを知る
研究者として横顔をご紹介するとともに、研究の意義や楽しさを語ってもらいました。聖心女子大学の魅力をより深く知るために役立てていただきたいと願っています。
研究テーマ | : | 国際開発学、NGO・NPO論、南アジア地域研究。 現在の研究テーマは、南アジアのマイクロクレジットとNGO、インドの被差別カーストの人々、日本のODAとNGOなど。 |
---|---|---|
著書・論文 | : | 『コソボ難民救援ーNGOが国際赤十字で考えたこと』国際協力出版会、『「不可触民」と教育:インド・ガンディー主義の農地改革とブイヤーンの人びと』明石書店、『国際協力プロジェクト評価』国際開発ジャーナル社、『進化する国際協力NPO:アジア・市民・エンパワーメント』明石書店、『バングラデシュを知るための60章』明石書店、『改訂版 NPOマネジメント』放送大学教育振興会、『グローバル化・変革主体・NGO』新評論、『アジアの市民社会とNGO』晃洋書房 |
『大地のうた』
監督:サタジット・レイ
発売元:アイ・ヴィ・シー
価格:1,800円(税抜)
インドの寒村を舞台に、草の根の人々の人間詩を描いた映画。インド年間最優秀作品賞やカンヌ国際映画祭ヒューマンドキュメント賞など世界中の賞を総なめにしたサタジット・レイ監督のデビュー作です。ベンガルという豊かな穀倉地域のきれいな描写を観て、こんな生活もあるのだということに気づいてほしいと思っています。
インドの子供たちと。
国際開発学を専門とする大橋正明先生は、自身のことを学者ではなく活動家と評する。教鞭をとる傍ら、国際協力NGOセンター(JANIC)の理事(2015年6月までは理事長)を務め、日本のNGO団体を支援するNGO活動に力を注いでいる。活動は、それだけではない。南アジアの貧しい人々の生活上の問題解決に向けた活動を行う日本のNGO「シャプラニール=市民による海外協力の会」で、海外活動委員、評議員としてライフワークともいえる実践的な活動に取り組んだり、昨年は日本政府の国際協力の在り方を取り決める「ODA大綱(現在は開発協力大綱)」の見直しのための有識者委員会のメンバーも務めた。活動の場をあげたら枚挙にいとまがない。
先生の著書。『「不可触民」と教育』(世界人権問題叢書)明石書店。インドでの経験が元となっている。
何が先生をこうまで突き動かしているのか、間髪を入れずに答えがかえってきた。「それはもう、学生時代にインドに恋をしたからなんです。一度は就職をしたのだけれど、インドが忘れられず会社を辞めて1年間インドでヒンディー語を学び、その後「シャプラニール」というNGOのバングラデシュ駐在員となったのが、本格的な活動のはじまりでした。」その前の大学3年生の時に、1年間休学して行ったインドでは、カースト制の一番下層にあたる「不可触民」の子どもたちが全寮制で学ぶ小学校でお手伝いをした。その時出会った子どもの一人は州議会議員となり、今でも多くの元生徒たちと交流が続いているという。
仙台で開催された『第3 回国連防災世界会議』の閣僚級ラウンドテーブル「災害からの復興:ビルド・バック・ベター(Reconstruction after Disasters: Build Back Better)」に世界の市民社会を代表して出席し、スピーチを行った。
『第3回国連防災世界会議』で配布した『福島10の教訓 原発災害から人びとを守るために』。日本語、中国語、ハングル、英語、フランス語の5ヵ国語で作成した。他の言語も増やす予定。
「よく、学生たちは途上国を援助したいと言いますが、『援助』という言葉を安易に使うことは傲慢なことではないかと、私はいつも言っています。向こうの人々と同じ目線でものを見ないと、活動も関係も長続きしません。相手に愛をもってこその関係だと思います。」
8年ほどのNGO活動を経たところで、これまで実践してきた国際協力について体系づけて考えてみようとアメリカへ留学。コーネル大学大学院で農村開発や国際農業などを学んだ後、国際赤十字・赤新月社連盟のバングラデシュ駐在員に。ここでは、大型サイクロン(台風)による被災者の救援やミャンマーからの難民の受け入れなどを体験した。次々と活動の場が広がっていくのは、これまでの活動を通して築いてきた人的ネットワークに依るところが大きいという。
最近の活動では、2015年3月に仙台で開催された『第3回国連防災世界会議』で採択された防災枠組みの対象に福島の原発事故を災害として取り入れてもらうことに成功。福島の教訓を世界に伝えるために、『福島10の教訓 原発災害から人びとを守るために』という冊子を5カ国語で制作した。「この活動は次世代の人々のためにも、もっと多くの言語で伝えていかなければと考えています。」
先生の著書。『バングラデシュを知るための60章』。バングラデシュが持つ多彩な魅力を、歴史、文化から社会に至まで、広い範囲で紹介している。『コソボ難民救援ー NGOが国際赤十字で考えたこと』国際協力出版会。プロの救援活動者として、難民救援の現場を冷静に記した記録。
「聖心女子大学では、グローバルに活躍する人材を育てていきたいと思っています。たとえば国連難民高等弁務官をやってこられた緒方貞子さんのような。また、プロとして海外で活躍するのではなくとも、普通の生活者として外国人や異文化などに対しての理解を深めてくれるだけでも素晴らしいことだと思います。中でもアジアでは世界の人口の半分の人々が暮らしています。そのアジアを理解してほしいですね。特に南アジアは料理が美味しいし、人を見ているだけで面白いですよ。」NGOやNPOに興味を持ち、これから何かやってみたいという学生は、ぜひ相談してほしいという大橋先生。先生の広いネットワークの中から、実績のある団体やプログラムの紹介など、確かなところへ後押ししてもらえる。「文化への興味関心から一歩踏み出すだけでも、世界への考え方が変わってくると思います。」