聖心女子大学

総合現代教養「災害と人間」

 本講義を計画した2011年末の時点で東日本大震災から1年が過ぎていたが、未だ30万人を超える人々が避難や転居を余儀なくされていた。また、原発事故はエネルギー問題への関心や放射線の影響に関する不安を引き起こし、マスメディアにおいても、また、ネット上においても多くの議論が行われ、脱原発を訴えるデモも頻発していた。自然と人間、国家と個人、被災者と援助者、文化や学問のあり方..様々な側面で人々は3.11以前とは違った視点で物事を考え始めていた。一方で、キャンパス内では何事もなかったかのように日々の生活を過ごす学生たちの姿があった。平常を取り戻せたことは何よりであるが、高等教育機関で学ぶ学生には、今尚苦しんでいる被災者の現状を理解するとともに、3.11以降の新しい社会の動きに向き合い、どう関わっていくべきかを考えて欲しいと思った。さらには、首都圏直下や南海トラフにおける大地震への懸念も報道され、日々の穏やかな生活の中に実は多くのリスクが潜んでいることも明らかとなった。今後、長い人生が待っている学生たちは、有事にも冷静で柔軟な対応ができるようこの機会に多くを学ぶ必要があると考えられた。

 連続講義「災害と人間」は11名の教員が分担して行うこととした。表に授業の内容を示した。被災地の現状や防災に関する話だけでなく、学術研究に基づく災害時の行動や社会の動きについての解説、国際的な支援、教育問題、さらには文学との関連や自然観や宗教観などスピリチュアルな側面への影響など、本学ならではの多様性で深みのあるラインナップとなった。講義が月曜の5時限目(4時50分から6時20分)という時間帯でもあり、どれほどの学生が集まるか若干不安はあったが、蓋を空けてみたところ300名弱の履修があり、本学の最も広い教室がほぼ満員となった。講義の回が進んでも出席者が減ることはなく、毎回提出を求めたリアクションペーパーの中には、小さな字で裏面までびっしりと書き込まれたものが多かった。内容は、自身や知人の体験、被災地に対する思い、メディアや行政への批判、将来への不安、自身の社会的立ち位置に対する考察など多岐に渡っていた。一見、気楽に日々を過ごしているかに見える学生たちであるが、若い感性は今回の災害や社会的変化に敏感に反応していたのだと感じた。

 また、支援会議の基本方針にあるように、この講義のもう一つの目的は、学生たちの支援活動に対するモチベーションを高めてもらうことであった。2011年度に行った本学の1年生へのアンケート調査によれば、その多くが「支援活動に関わりたいと思うが、自分には自身が無い」と感じていることが明らかとなった。「自分には能力がなく、かえって迷惑をかけるかも」「今さら、のこのこ出かけても、素人にできることはない」といった不安である。また、そう思うことで活動に関わらない自分を正当化している面も見られた。そこで、この講義では被災地での活動を続けてきた学生たちに体験談を語ってもらう機会も設けた。「はじめは私も1回きりの経験だと思って参加した」「今でも大半のボランティアは初めての人」「たくさんの出会いがあり、社会が拡がる」「支援に行くなら大学生の今がチャンス」...自分と同じ立場の学生から次々と発せられるメッセージが受講生たちの背中を強く押したことは、リアクションペーパーにも鮮明に表れていた。

(文責: 東日本大震災復興支援活動推進会議 菅原健介)


2016年度 災害と人間(授業内容)  詳細はシラバス検索サイトへ

第1回 オリエンテーション
第2回 災害時、人はどう動いたか
第3回 陸前高田の中学校避難所運営
第4回 被災地における<教育復興>の課題:ユネスコによる国際支援とレジリエンス
第5回 3.11後の社会と向き合うために
第6回 災害対応における私の当事者性
第7回 技術と人間
第8回 福島で続く原発災害の状況と教訓
第9回 飯舘村と震災、もしくはいいたてミュージアムの取組
第10回 災害対策の国際的枠組みを学ぶ
第11回 災害の発生と保健・安全
第12回 震災への聖心女子大学の対応
第13回 災害と祭り、祈り
第14回 災害と向き合い、乗り越える人々
第15回 まとめ・振り返り


2015年度 災害と人間(授業内容)  詳細はシラバス検索サイトへ

第1回 オリエンテーション: 3.11を振り返る
第2回 福島で続く原発災害
第3回 災害対応における「わたし」の当事者性
第4回 子どもたちの描いた絵
第5回 技術と人間
第6回 マグダレナソフィアセンターと復興支援
第7回 被災地の今と支援を考える(1)ゲスト講師を迎えて
     ≫ 『高砂長寿味噌本舗 高砂ご夫妻 』 講演
第8回 被災地の今と支援を考える(2)ゲスト講師を迎えて
第9回 防災への国際的取組み~第3回国連防災会議から
第10回 被災地の人々にとっての伝統芸能
第11回 震災の時、人々はどう動いたか~事例からの心理学的分析
第12回 東京直下地震シミュレーション
第13回 3.11後の社会と向き合うために
第14回 まとめとディスカッション(1)
第15回 まとめとディスカッション(2)


2014年度 災害と人間(授業内容)  詳細はシラバス検索サイトへ

第1回 オリエンテーション: 3.11を振り返る
第2回 震災の時、人々はどう動いたか?〜事例からの心理分析
第3回 被災地における<教育復興>の課題:国連、NPO、大学による支援
第4回 子どもたちの描いた絵
第5回 東日本大震災におけるNGOとボランティアの活動
第6回 技術と人間
第7回 被災地の今と支援を考える(1)ゲスト講師を迎えて
     ≫ 気仙沼市リアス・アーク美術館 学芸員 山内宏泰氏 講演
第8回 震災の心理
第9回 震災と報道
第10回 被災地の今と支援を考える(2)ゲスト講師を迎えて
第11回 福島原発災害における人々の苦悩
第12回 マグダレナソフィアセンターと復興支援
第13回 災害の発生と保健・安全
第14回 3.11後の社会と向き合うために
第15回 まとめとディスカッション


2013年度 災害と人間(授業内容)  詳細は本講義のシラバスへ

1.オリエンテーション: 3.11を振り返る
2.震災の時、人々はどう動いたか?〜事例からの心理分析
3.被災地における<教育復興>の課題:国連、NPO、大学による支援
4.子どもたちの描いた絵
5.PTSD と解離:ケースの検討
6.技術と人間
7.被災地の今と支援を考える(1)
8.震災の心理
9.震災と報道
10.被災地の今と支援を考える(2)
11.国際社会からの支援の実態
12.マグダレナソフィアセンターと復興支援
13.災害の発生と保健・安全
14.3.11後の社会と向き合うために
15.まとめとディスカッション


2012年度 災害と人間(授業内容)  詳細は本講義のシラバスへ

1.オリエンテーション: 3.11を振り返る
2.被災地における<教育復興>の課題:国連、NPO、大学による支援
3.震災の心理
4.震災と報道
5.原発事故と放射線不安
6.技術と人間
7.マグダレナソフィアセンターと復興支援
8.国際社会からの支援の実態
9.子どもたちの描いた絵
10.震災と文学
11.宗教観、自然観、死生観の変化
12.その時、人々はどう行動したのか:実態調査と平常性バイアス
13.災害の発生と保健・安全
14.3.11後の社会と向き合うために~学生からの支援活動報告~
15.まとめとディスカッション


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