2011/3/17

新卒業生へ

 三月十二日(土)、本学の第七回博士学位授与式、第五十八回修士学位授与式並びに第六十一回文学部卒業式は東日本大震災の影響に考慮し中止といたしましたが、その式で予定されていた学長からの式辞をお届けいたします。
 なお、この式辞は、学位記等と同時にお届けする「聖心キャンパス」にも掲載しております。併せてご覧ください。

第61回 卒業式 式辞  「和の心」

学長 寺中 平治

 第61回文学部学位記授与式を迎えられた卒業生の皆様に、心からお祝い申し上げます。おめでとうございます。またご息女様を本学の教育にお委ねいただきましたご父母の皆様にも、心からお祝いとお礼を申し上げます。卒業生の皆さんも、まずご父母の皆様にお礼を申し上げてください。皆さんは、ご父母の皆様の愛と支えによって、今日の日を迎えられたのです。

 大学教育の国際化ということがよくいわれていました。しかし今日では、大学のグローバル化、つまり地球化(地球規模化)という、より広い意味で叫ばれています。これからの皆さんの進む道は、一人ひとり異なっていると思います。多くの人は就職するでしょうが、一方大学院等へ進学したり、またある人は留学したりすることでしょう。どのような方向に進むにしろ、これから出る社会も、グローバル化、あるいは大学以上にグローバル化が進んでいるといえます。本学は、教育方針として国際化を謳った教育をし、また卒業生の社会での評価が高く、皆さんの努力の結果、多くの人は自ら望んだ道に進んでいます。しかし一般に、大学生の就職難が伝えられています。このようなとき、日本の企業が、外国人を採用しているというニュースを聞きました。このニュースを聞いて、それならばどうして日本人を採用しないのかと思いました、皆さんのなかにもそう思った人が多かったのではないでしょうか。しかし逆に外国の企業で、その国で失業者がいたとしても、日本人を正社員として雇ってくれるところがあります。グローバル化はそこまで進んでいます。皆さんはそのような世界に出て行くのだということを、よく理解してください。

 これからこのグローバル化された社会に出て活躍する皆さんに、心にとめておいていただきたいことがあります。それは他の国の文化に興味を持ち、理解すると同時に、日本人として日本的なものに関心をもち、それを大事にし、また世界に発信していただきたいということです。この聖心女子大学の初代学長は、アメリカ人の聖心会の修道女であられた、マザー・エリザベス・ブリットです。マザーブリットは、大学が創立された1948年から1967年まで長きに亘って学長を務められました。この学長により聖心女子大学の基礎が築かれたわけですが、私は直接お目にかかったり、またお話を伺ったことはありません。しかしあるシスターから、マザー・ブリットは、キリスト教カトリックからする本学の理念を追求する教育をするなかで、日本の文化を大事にすることを常に強調されていたということを伺いました。私はこのことを聞いて感銘を受けました。グローバル化とは、各国や各民族が、その国の文化を捨てて、同じ文化をもつことを意味しません。われわれは、他の国の文化を理解する一方で、自国の文化も大切にすべきなのです。これが真のグローバル化です。

 ここで日本の文化の根底にある、日本人のもっているものの見方、考え方としての和の心を考えてみます。ここでいう和は、和室とか和風文化という形で用いられる「和」のことです。もちろん誰でも思い出す、あの聖徳太子の17条の憲法に見られる「和をもって貴しとなす」で説かれた和のことです。なおここに出てくる憲法とは、われわれが知っている憲法の意味ではなく、役人の心得のようなものです。そこで和が貴く、大事であるといわれているのです。この和を一義的に定義するのはむずかしいですが、一般に「仲良くする」、「おだやかなこと」を意味します。この和の精神は、異なった考えや意見やものごとも受け入れ、争いをしないことを意味します。もちろん日本人が、まったく争いごとをしないなどといっているのではありません。しかし一般的な傾向として、日本人は、外国の文化や思想を排斥、非難するのではなく、外国の文化や思想に寛容であり、宥和の精神で受け入れることが多かったといえます。これは日本の歴史が示しているところです。

 この和という日本語を、英語では何と訳されているかを和英辞典で調べてみたことがあります。そこには’peace’という英語が載っていました。つまり和とは平和ということなのです。そこですぐにカトリックのミサにあずかりますと、平和の挨拶が行われることを思い出しました。またキリスト教において、よく平和が説かれることは、皆さんがご承知のとおりです。

 ここでこのキリスト教における平和の思想と日本の和の心との関連を考えることも、改めてわれわれ日本人に課せられた課題かと思われます。さらにそこから、本学で学ばれた、キリスト教の愛の精神と日本の和の精神とのつながりを考えることも、またわれわれに課せられた課題であるといえるかもしません。

 これからグローバル化が一層進む社会に出て活躍される皆さん、聖心で身に付けた聖心スピリットの上に立って、他の国の人々や文化を理解すると同時に、日本の文化に誇りをもち、和の精神を生かして、平和な世界を築かれることをお願いして、私の卒業式の式辞とさせていただきます。