ゼミ紹介

グローカルを考えるゼミ合宿

 2018年9月、国際交流学科「国際文化協力演習」(指導教員 岡橋純子准教授)の3・4年生が、世界遺産に指定されている富山県南砺市五箇山と岐阜県白川村へ、ゼミ合宿へ行きました。目的は、現地の方々と共におこなうフィールドワークです。菅沼集落周辺に移築された一棟の大きな合掌造家屋に皆で一緒に寝泊まりし、昼は太陽の下歩き回り、夜は満点の星空を楽しみました。
 国際文化協力演習では、自然や文化環境の保全と活用、まちづくり、コミュニティ・ビルディング、 アイデンティティ・ビルディングなどのテーマに、世界各地の例を考察しながら取り組んでいます。

 五箇山の菅沼集落では、合掌造の茅葺屋根について、その維持・葺き替え、茅の調達の現実的課題や苦労、努力についてヒアリングをおこないました。また、近世の時代からここにはどのような人々が何を生業として暮らし続けてきたのか、今日の住民の方々の世代構成は、などといった生き生きしたお話をうかがうことができました。

 白川村役場では、地域の歴史・風土や合掌造家屋の構造・用途、合掌造に対する住民認識の歴史的変遷、空き家活用の課題について教えていただきました。また、観光振興に関しては、増大し続けるインバウンド外国人観光客への対応と規模の小さな保全地区の住民の安寧な暮らしとのバランスとをどう考えるのか、保全地区内外でのルートの多様化や周辺地域も含んだ質の高い観光とはどのようなものであるべきか、を語っていただきました。さらには、参加学生から次々に出た質問に対し、どぶろく祭とコミュニティ意識の強さについて、子どもたちへの教育について、など村づくりに関するとても重要なお話もうかがうことができました。村では現地NPOの方々のガイダンスのもと、 観光対応グループは、観光客向けのサイネージ(標識、ピクトグラム)、施設、インタープリテーション(情報共有)の状況に関して気づいたことを書き留め、状況マッピングをおこないました。カルチュラル・マッピンググループは、荻町地区をくまなく歩きまわり、多く所在する消化機器や、水田景観、合掌造の立つ方角、電柱埋蔵、空き地になった区画、移築屋根の勾配の違いなどにも気づきながら、地図に多くのメモを書き込みました。

 白川郷の今にとって重要な背景は、早期から住民組織として合掌造保存会が結成され、活発な内発的活動そのものが村を守ってきたという事実です。ただし、人の出入りや社会経済的変化の中で、掲げられる「売らない貸さない壊さない」「No Change 」ポリシーを貫くためには、何のchangeを回避して伝統を守り続け、何のchange は逆に受容するのか、を考えることが大切であろう、と議論をおこないました。

 また、多くの参加者にとって印象的だったのは、山間の集落でいただく郷土料理とそれにまつわるお話です。合宿に先立ち、五箇山でも白川でも、数か月前から素材の準備をしてくださいました。伝統的には、工夫を凝らした保存食や数段階処理した木の実などが多く使われます。白川で心のこもった郷土料理を提供してくださった女性のお話からは、生活や流通の変化、味覚の変化の中、手のかかる料理の後継者不足が深刻である現状を考えさせられました。白川郷を見下ろす坂の上の見晴台で、その女性がプレゼントに持たせてくださった赤米のおにぎりをいただきながら、有形無形の文化を受け継ぐこと、次世代に伝えること、広く共有することの意味を考えました。

 合宿最終日には、五箇山で茅(カリヤス)を使った草木染めを教わり、この場所の風土の中で生まれた知恵や工夫に思いを馳せながら、参加者それぞれが独自にカリヤス染めのスカーフデザインを楽しみました。

 国際レベルでのグローバル連帯のもと、持続可能な発展へむけてのひとつひとつの重要課題へ向けてはローカル力が大切です。そのようなグローカルな力をどう創生していくことができるのか、今回の合宿では日本の五箇山と白川郷から学ばせていただきました。

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