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その信頼、一方通行?双方向?

  • 人間関係学科

藤原 勇 専任講師

社会心理学・組織心理学・消費者心理学

研究のテーマ

人間関係を心理学で考える(上司・部下関係に置ける信頼と被信頼の心理的な効果)

研究テーマの内容、研究活動

私の研究テーマは「信頼」です。信頼関係は、自分が相手を信じさえすれば万事うまくいくとは限りません。たとえば、親友を信頼していても、その親友から信頼されていないと思えば精神的にきついでしょう。また、相手から信頼されていると思っていても、その相手を自分が信じていない場合も厄介です。なぜなら、信じていない人から信頼され、過剰に頼られると、その関係を面倒だと思いやすいからです。たとえば、試験前になり、それほど親しくない人たちから「ノートを貸して」とか、「ここを教えて」と何度も頼られると、自分の試験勉強もできず、わずらわしく思うのではないでしょうか。

このように、一方的に信頼したり、信頼されたりする関係は続けることに苦労し、継続できてもストレスがたまります。大事なのは、自分と相手が信頼しあっていると思えることです。

こうした「相互信頼」について、私はこれまで上司・部下関係を対象に研究してきました。上司・部下関係は複雑で、友人関係と違うことは想像に難くないでしょう。たとえば、上司と部下の間には、パワーの差があります。ここでのパワーは、権限や責任、専門的知識や技術など、人に影響を与える様々な力のことです。こうしたパワーの差がある相手と信頼関係を築くための心のメカニズムをひも解いていくことが、私の研究の目的です。それにより、一人でも多くの人が協働しやすい職場環境をつくることにつながればと思っています。

被信頼(縦軸)と信頼(横軸)を高低で分けて分類した4タイプの心理的効果

研究テーマの意義・面白さ

現在、職場では、働く人のメンタルヘルスへの配慮が欠かせません。また、職場いじめやパワー・ハラスメントといった職場の人間関係の問題が後を絶ちません。これらの問題は、職場内で信頼関係を築けていないために起こることが少なくありません。また、同様の問題は、学校でも見受けられます。たとえば、教師・生徒間のハラスメントや生徒間または教師間のいじめです。こうした問題の解決に貢献すべく、信頼関係の研究を行っています。

ただ、私も初めから社会への貢献を念頭に研究を始めたわけではありません。まず、自分と馬が合う人もいれば、合わない人がいることに疑問を抱き、人と人とのつながり方やつながりやすさなどに関心を持ちました。そして、卒業論文で信頼をテーマとして取り上げ、研究を始めました。大学院では、対人心理を専門とする先生のもとで指導を受け、それと並行して産業・組織心理の授業を受けたことで職場の人間関係に興味が広がり、今の研究テーマに至りました。

高校生や学生へのメッセージ
私の場合、研究したいことが最初から明確だったわけではなく、偶然の積み重ねで決まりました。こうした「偶然の機会」は、プランド・ハプスタンス理論によると、人のキャリアの大部分を左右するとされています。ただし、偶然の機会を得るには、受け身で待つのではなく、自ら積極的に活動することが重要です。今、夢や目標などの「やりたいこと」が明確でない人は、むしろ明確でないからこそ、様々なことに好奇心を持ち、失敗やリスクを恐れずに挑戦するなど、積極的に活動してみることをおススメします。
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