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明清時代中国の女性はいかに生きたか

  • 史学科

五味 知子 専任講師

中国史

研究のテーマ

明清時代中国のジェンダー史

研究テーマの内容、研究活動

最近の研究テーマの一つは裁判の文書に描かれた女性たちの生活です。私の研究は、王朝時代の中国に生きていた普通の女性たちはどのような暮らしを送っていたのだろうか、という素朴な疑問が出発点となっています。庶民女性は史料を書き残しませんでしたが、彼女たちの生活に関する手がかりは、裁判の記録に残されています。たとえば、供述書には何歳で結婚し、事件が発生した際にはどのような状況であったのかが細かく記されています。明清時代の漢族の女性は纏足をし、家の中で生活することが望ましいとされていましたが、裁判史料からは庶民層の女性が漁師の夫が取ってきた魚を行商して歩いたり、田畑で農作業に励んだりしていた様子がうかがえます。また、役所でも女性の検死をするために産婆を雇ったり、女性の囚人を見張るための女性の下役人を雇ったりしており、女性の経済活動についての情報を得ることができます。庶民女性の経済活動は家族の衣食をまかない、家長が納める税金の足しとなり、ひいては社会を支えるものだったに違いありません。大きな事件にはかかわらなくても、そんな普通の人々の日常の一こまが社会全体を支える役割を果たしていたことを忘れずに、史料を丹念に読みといていきたいと思います。

清代の台所(胡雪岩故居)・五味撮影     
冤罪事件の解決に尽力したといわれる胡雪岩の故居・五味撮影

研究テーマの意義・面白さ

裁判における女性の立場に興味を持っています。清代末期のある冤罪事件においては、家主だった男性とその家の借りてだった女性が愛人関係となり、夫を殺害したと疑われました。疑いをかけられた女性には何の助けもありませんでしたが、男性は科挙に合格した知識人で妻や姉の力を借りながら、上訴を続けました。その時期になって英国人により創刊された民間の新聞が世論形成に大きな役割を果たし、再審を経て、疑いをかけられていた男女は釈放されました。その背景には、清朝の裁判の仕組みに関する国際社会からの批判もありました。私は、身近な問題から、徐々に政治や経済、社会構造といった大きな問題へと視点を広げつつ歴史をみるミクロヒストリー的手法に魅力を感じています。日常生活や家族の形成といった人間にとって日常的な営みが、時代や地域の差によっていかに異なるものなのかを知ることで、私たち自身も常識や「当たり前」といった思考の枠組から自由になれると思います。

台南の五妃廟・五味撮影
高校生や学生へのメッセージ
歴史が暗記科目だというイメージを持っている方は多いと思いますが、大学で学ぶ歴史はそれとは違います。過去の人間の営みに関すること全てが歴史学の対象です。自分の好きなことを思いきり勉強してください。
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