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記憶のしくみ―なぜ年をとると記憶力がよくなるのか?

  • 心理学科

高橋 雅延 教授

認知心理学

研究のテーマ

認知心理学

研究テーマの内容、研究活動

記憶とは実に不思議なものです。たとえば、試験勉強で覚えておきたいのに忘れてしまう、逆に、失恋のように忘れたいのに忘れられない、といった経験は誰にでもあるはずです。私自身、暗記が大の苦手でしたし、高校時代に失恋してしまった彼女の思い出が忘れられずに3年間悩み続けました。そこで、このような自分の思い通りにならない記憶であっても、そこには何らかの法則性があるはずという信念のもと、40年以上にわたって、大学生を対象に、実験や調査で調べてきました。その結果、自分にとって意味のないことがらは記憶に残らない、感情をかきたてることがらは忘れにくい、ということなどがわかってきました。
一方で、円周率100,000桁を暗唱できるといった並外れた記憶力をもつ日本人たちを対象にした研究も10年以上にわたって続けています。その結果、おそらく多くの人が考えるような特殊な才能を彼らはもっているのではなく、数字の羅列という無意味な材料を彼らなりの方法で意味づけているということがわかりました。それと同時に、あくなき好奇心、何でもやり抜く力といった、およそ天性の才能とは関係のない生き方こそが記憶にかかわっているということもわかってきたのです。
日々、急速なスピードで人工知能(AI)が私たちの身のまわりに入り込んできています。みなさんがもっているスマホですら、あらゆることがらが簡単に検索できます。このような新たな社会の中で、私が解明してきた人間の記憶のしくみがどのように変化していくのか、それが現在の私の研究テーマの一つです。  

並外れた記憶力のしくみを紹介する著書『変えてみよう!記憶とのつきあいかた』

研究テーマの意義・面白さ

高校3年生のとき、教科書で読んだ夏目漱石の『こころ』に衝撃を受けました。人間の心の奥底にうごめく暗い部分に圧倒されたのです。これがきっかけで人間の心(とりわけ無意識をさぐる精神分析)に興味をもち、心理学を志すようになりました。ところが、たまたま大学の授業で出会った記憶の実験のエレガンスさに魅了されてしまいました。精神分析とは異なり、自分で仮説をたて、その仮説が正しいかどうかを実験という手法で確かめるというアプローチが自分に合っていたのです。
記憶に関する疑問は山ほどあります。これらの疑問の一つ一つに納得のいく答えを出したいという思いで研究を続けてきました。今、ますます高齢化がすすむ日本社会において、高齢者の記憶力の低下がしばしば問題にされています。確かに、認知症など医学的治療が必要な高齢者もいますが、一方では、円周率100,000桁暗唱といった並外れた記憶力をもつ高齢者も存在しています。これらの並外れた記憶力をもつ高齢者や、ごくふつうの高齢者を対象に研究を行うなかで、あくなき好奇心を持ち続け、蓄積してきた知識や人生経験を活用することで記憶力がよくなるということがわかってきたのです。「年をとると記憶力がよくなる」ということを一人でも多くの方に知ってもらいたいというのが、現在の私の願いなのです。

高校生や学生へのメッセージ
多くの人にとって、自分の本当にやりたいことを見つけるのは難しいものです。受け身で待っていても絶対に見つかりません。積極的に、さまざまな経験をし、さまざまな人の話をきき、さまざまな本を読んでみてください。
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