研究テーマの内容、研究活動
学び手の視点から教育を考え直す研究をしています。みなさんは何のために勉強をしていますか?受験のためですか?勉強しろと言われているからですか?周りからは「将来きっと役立つから」と言われているかもしれませんが、本当に役立つのでしょうか?「学習科学」と呼ばれる分野では、学習が一人で辛抱強く行うものではなく、みんなと対話しながら時間が経つのがあっというまの楽しいものにするための研究を進めています。これから授業・学習の姿やテスト・評価の姿は大きく変わっていくでしょう。目指す学習成果は(1)学校やテストの外に持ち出すことができ、(2)自信を持って納得して使えて、(3)古い知識が必要に応じて更新し続けることができることです。このような学習環境をデザインする上で、鍵となるのが「情報通信技術(ICT)の活用」と「他者との対話を通した学び」です。ICTの活用も、単にオンラインの学習教材にアクセスして正解を受動的に学ぶのではなく、多様で異なる背景を持った他者と対面やネットワークでつながり、正解の有無に関わらず自分の考えを出し合いながら、一人ひとりなりの納得解を作っていくような学びです。AI (Artificial Intelligence: 人工知能)の研究は、人の強みと弱みを明らかにしています。人と人とのつながりが切れてしまうICTの活用ではなく、人と人とのつながりがより増幅されるようなICTの活用、IA (Intelligence Amplifier: 知能増幅器)の視点で、豊かな教育について考えていきましょう。


研究テーマの意義・面白さ
私たち人類は「知」を生み出すことで、社会を発展させ、科学技術を発展させてきました。しかし、それと同時に簡単に解決できない問題が生まれ、その解決のためさらに「知」を生み出すことが求められ、そのスピードが早くなっていると言われています。気候変動、COVID-19への対応、急激な世界情勢変化の裏で、最先端の情報通信技術(ICT)が良い形にも悪い形にも使われ社会を大きく変化させています。尊敬する研究者の一人、戸田正直氏は、人の感情システムと文明環境との関係を研究していました。人間は地球環境を大幅に変えたが、本来野生環境に適合するよう進化した感情システムは、急激な人工環境の進化に対応しきれず、社会に歪みが生まれていると言いました。その克服のためには「今」を生きている私たち一人一人が、多様な背景を持つ他者と建設的な対話を通し互いに賢くなっていくしかないとしています。対話を通した教育によって持続可能な社会の構築に貢献したいと考えています。