題名:
「留学生の異文化適応 ―中国人留学生・韓国人留学生を中心に―」
北澤 麻衣

要旨:
本研究の目的は、私立大学在日2年以上の中国人留学生、韓国人留学生を対象に中国人留学生、韓国人留学生が日本で直面する生活の諸問題を明らかにし、彼らがどのようにそれらの問題を乗り越え、どのようにそれらを理解しているのかを明らかにするものである。

1983年に当時の中曽根康弘内閣が打ち出した「在日留学生10万人受け入れ計画」は2003年に達成され、2009年度日本の留学生受け入れ留学生の総数は123,829人と過去最高となった。特に、本論文で対象とした中国人・韓国人留学生は、日本の留学生数全体の約8割を占めている。両国は地理的な近さだけでなく、文化的な近さなどから日本にとっても身近な国であろう。そのような中、両国の社会的な背景やインターネットや携帯電話など現代社会のコミュニケーション手段も変化から異文化適応過程にも変化が起きているということが先行研究で指摘された。

留学生の異文化適応には、さまざまな要因が複雑に絡み合っている。大学留学の場合、留学生は、勉学に加え、自文化とは異なる生活習慣、言葉、人などと接触することによって、様々な問題に直面する。その中で今回の調査では、留学生問題の諸領域における学習・研究領域、言語領域、対人関係領域、文化環境領域に焦点を当て、今日における中国人留学生・韓国人留学生が日本での生活でどのような問題を抱えているのか明らかにするために質問紙調査を行った。さらにそれらの問題をどのように考え、乗り越えていくのか明らかにするためにインタビュー調査を実施した。質問紙調査結果では、先行研究での留学生問題とあまり変化は見られなかったが、インタビュー調査では留学生それぞれの解決法や対処法を明らかにすることができた。これらの結果から、インターネットが勉学において大きなサポートとなっているということ、留学生の多くが、日本文化の相違や日本人の考え方を積極的に受け入れていること、以前よりも留学生と日本人学生との交流が広がっていることなど今日における変化も見ることができた。

このようなことから留学生の一方的な学びだけでなく、留学生の見解によって日本の学問や文化が「留学生の恩返し」によって豊かになるという「留学交流」の意味を改めて考えた。2008年度、新たに「留学生30万に政策」が策定され、おそらくこの先も中国人留学生・韓国人留学生は増加し続けるであろう。今日では、日本における社会問題から私たちは留学生を今まで以上に必要とし、頼りにしていく時代となっている。今回の調査から、日本と留学生双方に利益をもたらし、更なる留学生の異文化適応のサポートとなるのは「日本の積極的な情報発信」であると考える。

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