題名:
「国際理解教育の一考察」
高田 小百合

要旨:
本論文の目的は小学校の校長と教師への質問紙調査とインタビュー調査を通して、国際理解教育の現状の課題を探り、これからの国際理解教育の発展に必要なサポートは何か明確にすることである。

国際理解教育は人と人とが共に生きること、つまり、共生を目的とした教育であり、現在、ユネスコや文部科学省の中でもそのように位置付けられている。日本国内では2002年度から総合的な学習の時間という新たなカリキュラムが導入された。このカリキュラムは横断的な学習を通して自ら学ぶ資質や能力を育成することを目的とし、テーマは設定されているが、教師は自主的にカリキュラムを作成できる。設定されているテーマは、国際理解、環境、情報、健康であり、国際理解教育はこの中でも一番に最初に挙げられている。

一方で、教育現場には国際理解教育はあまり浸透していない現状がある。先行研究によると国際理解教育が教育現場に浸透していない理由は2つ挙げられる。1つは教師の国際理解教育に対する意識が低いこと、もう1つは国際理解教育を実践する上で何らかの課題があることである。本論文ではこの国際理解教育の普及の阻害要因が教師の国際理解教育に対する意識の低さにあるのか、それとも国際理解教育を実践する上で何か障害があるのかを検証する。調査対象地は横浜市である。これは横浜市が長年、国際理解教育に熱心に取り組んでいるからである。
調査結果から見えてきたことは次の通りである。

(1)国際理解教育に対する捉え方が教師によって異なっている。教師が国際理解教育を教育理念として捉えているのか、授業の一環として捉えているのかによって、実践方法に差が見られた。

(2)教育行政側が教師たちが充分に教育課程における国際理解教育の位置付けを理解できるような説明を行っていない、もしくは行っていてもそれが充分に浸透していない現状が見られた。そのため、教育行政は教師たちが国際理解教育を教育理念であると認識するようにさせなければならない。

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