題名:
「現代女性はなぜ結婚しないのか ―未婚女性の働き方と結婚の位置づけから―」
若狭 菜美子

要旨:
本研究の目的は、働く30代の未婚女性たちが自らの職業生活に結婚をどのように位置づけているかを通して、彼女たちが結婚していない理由を見た上で、現代の未婚女性の背後にある社会構造を明らかにすることである。そのために、30代の働く未婚女性20名を対象としたインタビュー調査を実施し、その分析を行った。

その結果、職業生活への結婚の位置づけは、「仕事への積極性」と「結婚への志向」をどのように持ち合わせているかによって以下の4つのタイプに特徴付けられることがわかった。(1)結婚後も仕事を続けていけるような環境を作っている「位置づけ明確タイプ」、(2)結婚後は仕事を辞め、結婚生活中心に過ごしたいと考えている「職業生活排除(専業主婦志向)タイプ」、(3)職業生活への結婚の位置づけにいまだに迷っている、もしくは結婚後も仕事をしていきたいと考えているが、結婚相手次第では仕事を辞めてもよいという矛盾した考えを持つ「位置づけ不明確タイプ」、(4)現時点では今後結婚するつもりがない「結婚生活排除(非婚就業志向)タイプ」である。

さらにこのタイプによって、彼女たちが現在まで結婚していない理由も異なることも示唆された。「位置づけ明確タイプ」は、自分で結婚するタイミングをはかっており、現時点ではそのタイミングを待っているために、現在は結婚していなかった。「職業生活排除(専業主婦志向)タイプ」は、性別役割分業を肯定しすぎていることで結婚が遅れていた。「位置づけ不明確タイプ」は、性別役割分業意識に迷いや矛盾があるため、そのような女性が結婚相手として選ばれていないことで結婚が遅れると考えられる。そして「結婚生活排除(非婚就業志向)タイプ」が結婚していないのは、結婚願望そのものがないためであった。

これまでの多くの先行研究では、女性たちが性別役割分業を否定する姿勢と社会での性別役割分業のあり方のジレンマによって、結婚に踏み切れないのではないかと考えられてきた(白波瀬,2005)。本研究の結果でも、実際に性別役割分業を否定し、結婚後も仕事を続けていけるような環境を作ろうと努力している人は存在していた。しかし、このように性別役割分業を否定している女性たちは、実際にはいつでも結婚できる状況であった。この点は過去の多くの知見とは異なる結果であった。一方、結婚から遠いのは性別役割分業を肯定している女性たちであった。これは性別役割分業意識を強く持つことが結婚の遅れに繋がるということを述べた四方(2004)の知見と一致する結果だと言える。結婚願望がある未婚女性たちには、男性に甘えるだけの性別役割分業意識ではなく、職業生活と結婚生活における役割をしっかりと担おうとする姿勢が求められているのではないか。

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