題名:
「自己愛の二側面と攻撃性について ―他者に対する攻撃行動と自己に向ける攻撃行動・自傷行為及び自己愛の二側面との関連について」
有坂 円

要旨:
本研究では自己愛の二側面「誇大型」と「過敏型」と攻撃性及びその一要素として自傷行為との関連性について検討することを目的とした。

第1研究では、既存の自己愛傾向と攻撃性、自傷行為に関しての尺度を用いて、自己愛傾向の「過敏型」側面と攻撃性、自傷行為について主に相関関係を検証した。そして、対象を青年期後期の大学生として、自己愛傾向の「過敏型」側面と攻撃性、自傷行為について質問紙調査を行い、その相関関係と従属変数を自己愛の「過敏型」、「攻撃性」、「自傷行為」とした場合の2要因分散分析を行った。検証した結果、仮説の自己愛の「過敏型」の主要因である目標や生きがい感が希薄で、自己アピールに消極的であるという特徴を持ちながらも注目欲求が高く、その点から対人関係が築きにくく、生きにくいと感じており、その点で同じく自傷傾向の高いものは社会性が乏しく人間関係がうまくいないという点から、問題が生じた時には衝動的に怒りを表現してしまいがちであり、その攻撃性が自傷行為として現れるのではないか?自己愛過敏型は攻撃の表現方法の一環として自傷行為を行う傾向にあるのではないだろうか?という仮説は支持された。

第2研究では、第1研究の結果を踏まえた上で、自己愛の「誇大型」側面を質問紙調査に取り入れ、自己愛の二側面及び攻撃性と自傷行為について相関関係の検討、及び重回帰分析を行った。仮説の自己愛「誇大型」と「過敏型」との間には攻撃性の様相の違いが見られると思われる①自己愛傾向「誇大型」は他者に向けての攻撃性が高く、自己へ向けての攻撃性、自傷行為とは相関は見られない(1)自己愛傾向「過敏型」は潜在的特権意識や賞賛・承認への欲求が強いことから他者に向けての攻撃性が自己愛傾向「誇大型」より高く、そして自己緩和不全や自己顕示抑制などの要因から自己嫌悪感情を抱き、自己に向けての攻撃性が自傷行為として表出されるのではないかという仮説が支持された。最終的に3点のことが明らかとなった。(1)自己愛「誇大型」よりも自己愛「過敏型」の方が、攻撃性、自傷傾向共に強く、抑圧されている部分が強ければ強い程攻撃性が高まる。(2)性差を検討した結果、男性の方が攻撃性(自傷行為含む)が強いことが支持された(3)攻撃性の発露の違いとして、対象攻撃行動をとるのは自己愛過敏型であり、攻撃行動の一環として自傷行為に走るのも自己愛過敏型である。

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