題名:
「なぜ料理ができると女の子らしいと考えるのか ―女子大生の意識調査から」
宮田 佳奈

要旨:
なぜ、調理と女性らしさは結びつけられるのか。山田(1996)と見崎(1999)の研究から、家事労働しての料理には家族への「愛情表現」の意味が付与されていて、手を抜いて家事労働としての料理をすることは、男性(夫)や子どものための特別な行き届いた配慮を行なうという女性(主婦)役割、女性性(女らしさ)を損なうものと考えられる。家事労働としての料理と女性らしさは深い関係があるかもしれない。他方、家事労働以外の意味づけがされている料理と女性らしさは関係があるのだろうか。村上(2000)の研究によれば、料理についての考え方を、(1)毎日ではなく気が向いた時に作る「趣味の料理」、(2)「趣味の料理」と違い必要に迫られて日常的に作る「自立の料理」、(3)家族のために毎日作る家事労働としての「家族の料理」の3つに分けることができる。更に、予備調査として行なった雑誌の料理ページの内容分析により、「趣味の料理」を「自分のために作る趣味の料理」と「異性や友人など家族以外の他者のために作る趣味の料理」に分類した。

本調査では、この4つの料理と平等主義的性役割態度スケール短縮版(SESRA-S)と「料理ができると女の子らしい」という意識の関係を、女子大生を対象にしたアンケート調査によって調べた。本稿で検証する仮説は、(1)「伝統主義的性役割態度を持つ人ほど(平等主義的性役割態度を持たない人ほど)、料理ができると女の子らしいと考える」、(2)「料理を家族のためにするものだと考える人ほど(家族への「愛情表現」だと思う人ほど)、料理ができると女の子らしいと考える」である。その結果、伝統主義的性役割態度と「料理ができると女の子らしい」という意識に相関は見られず、「家族のための料理」と「料理ができると女の子らしい」という意識にも相関は見られなかった。料理に関する項目が妥当かどうか調べるための因子分析により、料理は(1)「自己アピールのために作る料理」、(2)「趣味で作る料理」、(3)「家族のために作る料理」、(4)「自分で生きていくために作る料理」、(5)「空腹を満たすために作る料理」の5つに分類でき、この内(1)「自己アピールのために作る料理」と伝統主義的性役割態度に相関が見られ、更に料理を(1)「自己アピールのために作る」と思う人ほど「料理ができると女の子らしい」と思うことがわかった。ただし、「女性は家庭、男性は職場にいるべき」という項目には批判的な態度をとる学生が多く、もしかすると、伝統主義的性役割態度よりも「男は仕事と家庭・女は家庭と趣味」(国広,2005)という「新・新性別役割分業意識」が、「料理ができると女の子らしい」という意識に関係があるのかもしれない。

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