聖心女子大学の奥行きを知る
研究者として横顔をご紹介するとともに、研究の意義や楽しさを語ってもらいました。聖心女子大学の魅力をより深く知るために役立てていただきたいと願っています。
研究テーマ | : | 姿勢:ボディ・コンディショニング・エクササイズ方法、ピラーティス・メソッド |
---|---|---|
著書 | : | 論文を読んでください。 |
『健康は「呼吸」で決まる―口呼吸が病気をつくり鼻呼吸が病気を治す』
著者:西原 克成
出版社:実業之日本社
『好きになる解剖学』
『好きになる解剖学Part2』
著者:竹内 修二
出版社:講談社
高田先生はピラーティス・メソッド発祥の地ニューヨークで、伝統的ピラーティス・メソッド(現ロマーナ・ピラーティス)で日本人として第1 号の指導者資格を取得(1995 年)。キャンパス内の一室にピラーティス・メソッドで用いるエクイップメントを備えた、これらの輸入されたエクイップメントのラインナップは国内随一である
正しい姿勢で立つことは、意外と難しい。自分ではまっすぐのつもりでも左右どちらかに傾いていたり、首が前に出ていたりするものだ。では、なぜ、それではいけないのか。高田遵湖先生が「良い姿勢を作るエクササイズ」の研究を続けているのは、それが健康保持の基本であり――ひいてはからだとこころのメンテナンスにもつながるためだ。
「長い人生をよりよく生きていくためには、自分の身体をしっかり見つめて、良い状態作りに意識的であることが必要です。身体を思うように動かせること、その第一歩が良い姿勢作りと考えて、長年、ボディ・コンディショニングを研究してきました」
姿勢の歪みを直されると、当人は最初に違和感を感じる。例えば右肩にバッグをかけるクセがあると、右肩が上がった状態が普通だと身体が記憶してしまっているためだ。しかし、調整のためのエクササイズを続けていくうちに違和感は次第になくなる。それは、脳が身体を良い姿勢になるように正確に動かすことで、運動記憶の中身を変えていくため。そして、良い姿勢を「気持ちよい」と感じ始めるためだという。
「姿勢が良くなると、ただ立っているだけなのに『先生、立ちやすく、なんだか気分がいいです』という声が出てきます。また、姿勢改善の効果として生理痛がなくなった、腰痛がなくなったといった感想も聞かれます。1年生の授業では、姿勢の次には歩き方を指導しています。良い姿勢で美しく歩くことが目標です。学内でキャンパス廻りをし、美しく速く歩けるようになったらキャンパスを出て、近場の原宿や渋谷まで足を伸ばします。授業の中だけではなく、日常生活でも姿勢に気を付け、美しく立つことや、歩くことに楽しさを感じてほしいですから」
さらには脈拍計をつけて歩き、自分が一番気持ちよく歩ける心拍数を個々に見つけてもらう。歩いて気分がリフレッシュする実感を数値で確認する――このように自分自身でデータを確認し、客観的な情報をもとに、実感を客観的な学びへと深めていきます。
エレクトリック・チェアー
高田先生は学生時代、舞踊教育を中心に、身体のメカニズムを専門に修めた。以降、身体を酷使するダンサーが故障することなくキャリアを積んでいくために有効なエクササイズ作りに取り組んできた。海外からスポーツ医学に関する研究書を取り寄せる中で出会った「ピラーティス・メソッド」が、高田先生の現在の軸となっているという。
「ピラーティス・メソッドは身体を鍛えるというよりも、結果として身体が強くなる方法です。自分自身で、身体や動きを上手にコントロールし、思い通りに動かして、良い姿勢を作り、身体の不具合をなくしながら身体作りができるシステマテックな方法です。現在、健康な人をさらに健康増進することに加えて、身体的に不具合のある方の状態改善に役立てることにも力を入れています。例えば、脊柱側弯や麻痺改善、変形性股関節症などです。あるいは、病気の診断はされないが、腰が痛いなどいわゆる未病の方の状態改善に有効です」
対象が健康な人であっても、なんらかの疾患を持つ人であっても、指導の基本は同じだ。ハードなエクササイズはしない。苦しいこと、痛いことはしない。その人の身体を整えるために必要なエクササイズを教える。
自分の身体にしっかりと向き合って、身体のなかにおきていることを捉えながらエクササイズを行うこと。同時に、こころはどう感じているかに耳をすますこと。そして、正確に、集中してエクササイズをするためにこころを使い身体をコントロールすること。
「学生の皆さんには、日頃から『自分の身体を実験室にして』と伝えています。
エクササイズを実践して、今、身体に何が起こっているかを感じながら確認することは、当人でなければできないからです。エクササイズを意識的に行うことで心身は着実に変わっていける、その可能性をこれからも追究していきたいと考えています」