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本学卒業生による講演会「いまを生きるための『源氏物語』-らせん訳とはなにか」を開催

11月13日(木)宮代ホールで、「聖心女子大学未来プロジェクト」の一環として、本学卒業生で詩人・翻訳家としてご活躍中の森山恵さんによる講演会を開催しました。テーマは「いまを生きるための『源氏物語』-らせん訳とはなにか」。森山さんは姉の毬矢まりえさんとともに、かつてイギリスのアーサー・ウェイリーが英訳した『源氏物語』を、日本語に訳し戻すという大変ユニークなお仕事をされました。そして、その訳出方法を「らせん訳」と命名しておられます。

当日は、森山さんのご講演に先立ち、『源氏物語』についての導入ミニ講座が日本語日本文学科の青島麻子准教授によって行われ、会場が一気に平安王朝の世界に引き込まれたのち、森山さんがご登壇、大学時代の思い出話に始まり、イギリス人のアーサー・ウェイリーの”The Tale of Genji”をあらためて日本語にするという、難しくもさまざまな発見に満ちた翻訳作業について、その醍醐味を大変わかりやすく楽しくお話しくださいました。

詩人でもある森山さんは、ひとつひとつの言葉を大切に、思いを込めて丁寧に語ってくださいました。それは森山さんから後輩たちへの愛情に満ちたメッセージとして、学生たちの心に強く響いたようでした。

90分と短い時間ではありましたが、森山さんの視野の広さと深い教養、長大な翻訳を成し遂げられた力強さと、それにもかかわらず柔らかく暖かなお人柄に感じ入ったひとときでした。

<学生からの声>
・ウェイリーが「帝」を「エンペラー」と訳したり、「あはれ」はいくつもの言葉に訳を重ねられたりしていることを知り、私にとっての翻訳に対する考え方が広がりました。森山さんがご自分の感性と知性でそれを日本語に移し替えていく作業を重ねられたお話を伺い、さらに翻訳のイメージが広がっていく思いがしました。ひとつひとつの文脈に沿って、ウェイリーが注意深くことばを選択しているというご解説からは、言葉の大切さを知ることができました。また青島先生のご講義は、森山さんのご講演を理解するうえで、大変役立ちました。
・森山恵さんのご講演では、言葉の選び方の繊細さが特に心に残りました。『源氏物語』に書かれている思いは現代人の思いとも重なるという視点は新鮮で、「らせん訳」は古典を今へ近づける方法としてとても魅力的だと感じました。現在私は英文学を学んでいますが、あらためて“ことばの力”を意識する大切さを実感しました。

(副学長(学務・大学院担当)長野美香)

青島麻子准教授によるミニ講義の様子
森山恵さん
森山恵さんによるご講演の様子