実践的な学びのなかで自分なりの教師像を構築していく
⼩学校教諭をめざすきっかけは、⾃分⾃⾝の⼩学校での経験が⼤きいです。運動会では、5・6年合同で⿎笛を演奏披露します。6年⽣の時には、休み時間の全てを⿎笛の練習に充てるほど、みんなで練習を重ねました。壇上に上がり、200⼈で精⼀杯演奏し終えたときの達成感はもちろんですが、なかには涙を流して観てくださる⽅や、低学年の⼦が⼀⽣懸命拍⼿してくれた姿を忘れることはありません。この経験は、努⼒することの⼤切さや、仲間と⼒を合わせることの素晴らしさなど⾃分の⼈⽣に⼤切なことを教えてくれました。今度は私が教員となって、⼦どもたちにそうした体験をしてもらいたいと思い、教育学科の初等教育学を専攻しました。
教育学科は、教育学専攻と初等教育学専攻に分かれています。教育学専攻でも⼩学校教員の免許を取得することができ、幅広い教育の分野を学ぶことが可能なため、どちらに所属するか迷いましたが、最終的には、必修授業が多く、⼩学校教員免許取得が卒業案件に組み込まれている初等教育学を専攻しました。初等教育学では、⼩学校全教科の概論をはじめとする教育理論を学びながら、実践的な学習を重ねることで、将来の⾃分なりの教師像を構築していきます。特に実践的な学びとして、⾃⾝で学習指導案を作成し、授業を組み⽴て、発表する模擬授業があります。最初は教壇に⽴つことだけでも緊張しましたが、⼦どもへの声掛けや授業展開の仕⽅など、実践を繰り返すことで、だんだん⾃分⾃⾝の問題点がはっきりしていきます。同時に、児童役の学⽣とディスカッションを重ねながら、⼦どもにとって望ましい授業の在り⽅を探るのですが、児童役先⽣役を交互にやることで、視点が広がり、客観的に分析する⼒がついてくるのを感じています。模擬授業は、理科実験をはじめ、家庭科での調理実習や図⼯など、どれも児童が楽しみながら取り組める⼯夫を⾃分で考え、授業内容を組み⽴てます。生活科では、段ボールでUFOキャッチャーを⼯作しました。実際にまず⾃分が経験することで、制作⼯程の問題点や難しさなどに気づくことできました。
学生一人ひとりと向き合ってくださる先生がたから学んだこと
「人間学習」の授業では、山形県初の校舎一体型小中一貫教育校に2泊3日の日程で滞在し、フィールドワークを行いました。学童保育の現場では、自分たちで考えた遊びを提案し、子どもたちと交流したのですが、なかなか指示が通らず、ルールの理解も子どもによってまちまちだったりと、指導のむずかしさを感じました。そもそも遊びは強制されない「自由」な活動だということに改めて気づかされ、翌日はその反省をふまえ、子どもたちの「やってみたい」を重視して、遊びを一緒に考えました。子どもたちが主体的になることで、私たちも子どもたちも楽しむことが出来ました。
こうした授業を積み重ねるなかで感じるのは、子どもに寄り添うことの大切さです。
図工という教科では「表現」を点数化しなければいけません。「上手下手」というよりも、子どもが課題に向き合う姿勢や完成までの過程を考えて評価することが⼤切だと教わりました。そのためには、⼀⼈ひとりの児童の適性や個性を把握する必要があり、⾃分⾃⾝が成⻑しなければ、そうした眼は養えないと感じています。国語でも、物語の捉え⽅は⼀⼈ひとり違う、⼀つの答えに導く必要はない。個々の考え⽅や捉え⽅に寄り添いながら、その⼦の主体性を引き出すことが⼤切だということを教わりました。誰もとりこぼさない、誰もが学ぶことの楽しさを感じることのできる授業をすること。これは、聖⼼の先⽣⽅が、私たち学⽣⼀⼈ひとりと向き合い、意⾒を尊重してくださることからも実感しています。
子どもの立場に立って考えることの大切さ

⼩学校教育の現場では、教員として求められることが⽇々変化していると感じています。そのため、授業でもICTを取り⼊れた学びも実践しています。体育科教育法の授業では、ICT技術を使って模擬授業を撮影し、⾃分の視野の範囲を視覚的に確認し、問題点を振り返ることができました。授業では、⾃分たちが⼩学⽣の時に、ダンス授業を受けて感じたことのアンケートも取りました。ダンス教育が⼦どもたちにとって有意義なものになるためにどういう⼯夫が求められるのかを、ポジティブ・ネガティブ両⽅の捉え⽅のある⾃分たちの経験から考察することで、具体的なアイデアを出し合うことができました。
授業を通じて、⾃分を客観的に分析することの難しさを実感するとともに、児童の⽴場に⽴って考えることの⼤切さを改めて学ぶことが出来ました。
また、海外では、児童が教科を⾃分で選択できる国もあると学んだことで、教育は何のためにあるのかを考えるようになりました。私⾃⾝が聖⼼で、学びたいことに向き合うことで、学びの楽しさを感じていることもあり、遊ぶことと同様に、学びにも⾃主性が⼤切であり、学ぶ意欲を⾼めるための授業の在り⽅を、海外との教科書⽐較研究から考えていきたいと思っています。

- 教育学科
※所属・肩書きを含む記事内容は、インタビュー時(2024年)のものです。