自分のやりたいを後押ししてくれる
1年次で受けた授業で印象的だったのは、出産と⼦育てというテーマで、各学科の先⽣⽅が持ち回りで授業してくださる総合現代教養演習です。各先⽣の講義を受けたあと、ゼミに分かれ、⾃⾝の探究テーマを深堀りしていきます。当初、産後うつに関連したことを探求したいと考え⼼理学科のゼミを希望していました。割り当てられたのは違う学科の先⽣のゼミでしたが、担当の先⽣が、私の考えに寄り添ってアドバイスをしてくださり、切り⼝は異なるものの、探究の軸は変えずにテーマを追求できることがわかりました。あらためて「⺟親の語りかけが乳児の発達に影響を与えるのか」という探究テーマを設定したのですが、ここで調べたことや学んだことが、現在の研究テーマとなっているとともに、その後のソーシャルアクションにもつながりました。
少⼈数ゼミ形式の基礎課程演習では、⼦どもの権利に関するワークショップを履修したのですが、授業のなかで⼦どもの権利を⼦ども⾃⾝が知らされていない現実にショックを受けました。この現状を変えるために何ができるか考えていることをゼミの先⽣にお伝えしたところ、私の学究意欲の芽生えを汲み取って、すぐに学⽣のボランティア活動などをサポ ートする部署につないでくださり、⼤学が学⽣の社会貢献活動を⽀援する「ソーシャルアクションサポート制度(※1)」を紹介していただきました。この制度を利⽤して、⼦どもの権利を啓蒙するプロジェクトを⽴ち上げることができました。具体的には、出⾝⾼校の⽣徒⼿帳に⼦どもの権利条約を載せることができるか⾼校の先⽣に交渉したり、海外の事例を国際交流学科の先⽣にお話しをうかがうなど、⾃⾝の知⾒を深め、先⽣⽅に相談させていただきながら、活動しています。
※1 ソーシャルアクションサポート制度
本学学生の積極的な社会貢献活動・ボランティア活動を推進するため、運営や資金面での支援を行う制度。
自分の問題意識を明確にすることで見えてくる世界
専攻を決めるにあたっては、1年次の学びのなかで自分の研究の軸となった、⼦どもの発達に家庭がどのような影響を与えるのかを研究したいと考えるようになりました。教育学科と⼼理学科と迷うところもありましたが、課題に対し、具体的かつ多彩なアプローチから探究することができる教育学科教育学専攻にすすみました。聖⼼の副専攻制度を利⽤して、⼼理学科の発達⼼理学などの授業も履修しています。
専攻に進んだ当初、教職は取るつもりはありませんでしたが、ゼミの先⽣に、教育法を学ぶことで、課題と紐づくこともあるだろうし、理想と現場とのギャップについて知ることも⼤切だと教えていただいたことから、⼩学校の教職課程も履修しています。教育学科は、教育学と初等教育学2つの専攻に分かれています。教育学専攻を選んだのは、家庭環境の重要性や⽀援⽅法など、⼦どもの周辺課題を多⾓的に学問として学びたかったことと、実践的なスキルの両⽅を⾝につけたいと考えたからです。
実践的授業では、各教科の授業案を作成し模擬授業をします。社会科で「平和」をテーマとしたとき、広島・⻑崎や、⽇本での戦争体験をとりあげがちであることに気づきました。過去と現在が切り離され、いまは平和でよかったというまとめに疑問を感じ、⼦どもの権利条約をテーマに授業案を作成しました。いまも貧困に苦しんでいる子どもがいる、戦争も起きている、そこにある問題点はなにかという切り口で模擬授業を行ったところ、既成概念にとらわれず、自分で考えるということが評価され、実際に学内の学⽣に向けて模擬授業を⾏うという機会もいただきました。
大学でインプット(学び)したものを、アウトプット(実践)する、それを短期間でチャレンジすることができることはとても恵まれた環境だと感じています。実践して感じたことを振り返り、それをまた授業に持ち帰る、そのように聖心では、とても丁寧かつ具体的にサポートをしてくださるために、やる気さえあれば、チャンスはあちこちに転がっていると感じます。
聖心での学びが深まるにつれて、社会課題に対し、大学生の今だからこそできることにチャレンジしていきたいと強く感じています。
入試や偏差値から解放され、純粋に学ぶことと向き合えた

いま、授業で得た知識や実践的学びを外部での活動に⽣かすことができていますし、同時に外での経験を⼤学での学びに反映することもあり、⾃分のなかでいい循環ができていると実感しています。グローバル共⽣研究所(※2)に協⼒いただき、聖⼼のキャンパスで⾼校⽣を対象にした⼦どもの権利条約についてのワークショップも計画しています。高校生活は忙しく、なかなか社会の問題に目を向けることができないと思いますが、こうした経験から少しでも自ら学ぶことの楽しさを感じてもらいたいと思っています。高校までの受け身型の学習ではなく、大学は自主的に学ぶことが求められます。私自身、1年次の終わりに、友人と専攻を選ぶとき、皆が自分はこれを学びたいからこの学科に入りたいという話で盛り上がりました。入試や偏差値から解放され、純粋に学ぶことと向き合えたことで、本当に学びたいことを選択することが出来ました。
現在、出身小学校で自分のキャリアについてお話する機会をいただいたり、ソーシャルアクションを起こした大学生ということで中学や高校でお話させていただく機会がありますが、大学の授業で発表やプレゼンを行うことも多いので、講演時に人を惹きつけられる発表の仕方を工夫しながら話すことができていると感じています。逆に、ソーシャルアクションの中でワークショップなどを作ってきた経験が、教職課程で授業案をつくるときに役立ったりと、大学での学びと自分の今の生活が直接結びついて、日々自己成長を感じています。こうした貴重な経験で蓄えられた知見を、大学生のうちに具体的な形にして社会に還元できたらと考えています。
残りの大学生活のなかで、子どもの権利条約についての理解度の違いが、実際の家庭の子育てにどう影響しているのかをインタビューやアンケートを通じてエビデンス(証拠)を積み重ね、子どもたちが安⼼して暮らせる社会を実現するための仕組みづくりを研究していきます。
※2 グローバル共生研究所
聖心女子大学の教育理念に基づき、グローバル共生を実践するための教育と研究、社会活動を広く展開するとともに、解決のための活動や学問的探究の機会を提供する

- 教育学科
※所属・肩書きを含む記事内容は、インタビュー時(2024年)のものです。