研究テーマの内容、研究活動
まず英語学全般について述べましょう。
私が専門とする英語学という分野は、実践的で現代的な研究方法を用いて英語の仕組みを解明するものです。そこから、広く人間のことばというものの奥深さを知ることにつながっていきます。普段意識していない規則や興味深い事実をことばの中に発見していくのがこの研究の中心です。
英語の文法から一つ例を挙げましょう。英語でnot at allというときのat allという語句は疑問文・否定文・条件節に現れ、肯定の平叙文では使われません。someに対するany、alreadyに対するyetなども同じです。このような表現を否定極性表現といいます。
上と関連する例を考えてみましょう。「この国では雪が多い」など量が多いことを表すときはThere is much snow in this country.のようにはふつう言わず、muchの代わりにa lot ofなどを使いますがThere isn’t much snow…のような否定文や疑問文ではmuchが使われます。したがってmuchも否定極性表現です。
ただし、at all 等と違い、Much has been said about this story.などは可能であり、肯定文で全く使われないわけではありません。ある種の条件の下では肯定文でも使われます。つまり否定極性表現としての性質が強い語句と弱い語句があるのです。こうした「気づき」を出発点として、他のいろいろな語句についても調べてみる、さらに日本語など他の言語についても同様の現象があるかを調べる、このようなことが英語学であり言語学なのです。
研究テーマの意義・面白さ
英語の文法の実態は学校で習ったとおりではないことも多くあります。
That is not very good.というのは「それはあまり良くない」という意味だと覚えている人が多いと思います。しかし、定評ある学習英英辞典の一つではI’m not very impressed.という例文のnot veryの部分にnot at allという言い換えが示されています。つまり「あまり…ない」ではなく「全く…ない」という意味だということで、学校で教えられてきたことと食い違いがあります。ネイティブスピーカーの聞き取りやコーパス調査の結果、not veryは場合によって上のどちらの意味でも使われることがわかりましたが、どちらかというと「全く…ない」を婉曲的に表した表現であると言えそうです。
このようにあまり気づかれていない言語事実がまだまだあるのです。こういった何気ない日常的な表現の観察から深い原理に到達できることがあります。自分が誰よりも早く気づく新発見があるかもしれません。