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国際的な環境問題への対応策を見定める:熱帯の森を日本で守るには

  • 国際交流学科

川上 豊幸 准教授

環境学、森林保全政策、国際環境経済学

研究のテーマ

気候変動や生物多様性保全を含めた様々な環境問題の中でも、特に森林保全のために必要な企業や金融機関、消費者、政府等の役割を研究しています。

研究テーマの内容、研究活動

地球温暖化による気候変動の深刻な危機的状況を回避するためには、地球の平均気温の上昇を1.5度程度に抑えることが必要で、そのためには2050年までに人為的に排出される温室効果ガスを正味でゼロ(ネットゼロ)にしなければなりません。すでに1度以上の上昇が起きており、様々な気候変動による被害が報告されています。このネットゼロのためには、世界全体の温室効果ガス排出量の増加状況を2025年までに減少へと転換し、2019年に比較して、2030年には半減しなければならないと考えられています。日本政府が掲げている削減目標は2013年を基点として2030年までに46%減少ですが、不十分な目標で、更なる削減目標の向上が必要です。温室効果ガス排出量の計算は、人為的な炭素排出の集計で、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料の燃焼などによる炭素排出だけではなく、森林が人為的に伐採されるなどして、大気に排出される部分も含みます。しかし、現在、エネルギー分野の炭素排出量の評価には、森林から得た木材原料を燃焼したものは炭素排出の計算には含めていないため、伐採した木材を燃焼して発電をしたり、石炭に混ぜて発電に利用することも温暖化対策と考えられています。ところが実際には、同じ発電量を得るのに、効率の悪い木材は石炭よりも多くの炭素を排出してしまうことが指摘されています。こうした森林に関連した環境政策等の問題について研究しています。また、パーム油や紙利用、カカオ豆による森林減少や人権侵害の影響についても調査研究しています。

研究テーマの意義・面白さ

森林問題に取り組むきっかけは、1996年のアジア開発銀行(ADB)の年次総会に合わせたNGO会合で、ADBによるインドネシアへの植林プロジェクトの問題点について知り、調べたことがきっかけです。植林というのは、いいイメージがあったが、その植林プロジェクトでは、土地を収奪したことで地域住民との土地紛争が起きていると報告されていました。そこから、産業型の植林の問題を知ることになり、森林問題を深く学ぶ、きっかけになりました。森林問題について学んでいくうちに、気候変動問題にも森林という側面から取り組むことになりました。また森林は多くの野生動物にとっての生息地であったり、地域住民や先住民族の人々の生活の場所ですが、私たちの消費生活に利用される様々な商品のための原料生産のために影響を受けていることも知ることになりました。そうした関係性を知り、様々な関係者への働きかけを通じて、その関係性を変えていくことで問題解決のために果たすことのできる役割を見つけていくことには大きな意義や面白さがあります。さらに、それは森林問題のみならず、他の環境問題や社会問題への対応策を考える上でも利用可能なものもあり、意義深いものと考えられると思います。

産業植林地のために皆伐された泥炭湿地林(伐採後)
泥炭湿地林を伐採して掘削した排水路(伐採途中)
インドネシアの「水の森」泥炭湿地林(伐採前)
高校生や学生へのメッセージ
何か自分自身が興味や関心を持っているもの、面白いと思っているものについて、少し深く調べてみたり、考えてみたり、活動してみて下さい。そこから自分の得意分野や専門分野や、やってみたいことも見つかってくると思います。すでに見つけている人は、その分野をどんどん深掘りしてください。
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