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人権保障を通して、多様な人々が共存する社会のあり方を探る

  • 国際交流学科

佐々木亮 専任講師

国際法、ヨーロッパ法、国際人権論

研究のテーマ

人種や民族的出自による差別の禁止に関する国際人権基準とその国内実施のあり方

研究テーマの内容、研究活動

国際人権法を専攻し、人種や民族的出自による差別の禁止や平等の実現に関わる国際人権基準とその国内的実施について研究しています。現代国際社会における人権保障の最も基本的な文書である「世界人権宣言」をはじめ、主要な国際人権文書、日本国憲法を含む多くの国々の憲法も、差別を防止し平等を実現することを基本原則の1つに位置付けています。
平等が、人権保障の最も基本的な原則であることは確かだとしても、「どのような状態を平等というのか」「どのようにして、平等を実現できるのか」という問いは、容易に答えられるものではありません。その大きな理由の1つは、全ての人は、人種や出自、宗教、性別、性的指向・性自認、年齢など、様々な面で差異がある点にあります。ニーズにも違いが出てくるわけですから、実際に平等を実現するためには、ニーズの違いを考慮して、時に異なる扱いをすることが必要になります。他方で、人によって異なる扱いをすることは、その方法や程度を誤れば、重大な差別を生む危険と隣り合わせです。この点について、こちらも参照してください(https://jsil.jp/archives/expert/2021-6)。
 
それでは、どうしたら良いのか。私の研究では、これを2つの視点から考察しています。1つは、日本が締約国となっている人権条約です。人権条約とは、各国家が実現すべき人権やその方法について定めたもので、その多くで、国家が条約を守っているか監視し、改善すべき点について国際機関が勧告をする仕組みを用意しています。その勧告を分析することで、人権保障のどこに不十分な点があり、改善するためには何が必要なのかを明らかにします。もう1つは諸外国との比較です。私の研究では、ヨーロッパ46ヵ国(2024年2月時点)が加盟するヨーロッパ人権条約を比較対象としています。同条約では、締約国が人権を侵害した際に条約違反を認定し、必要な措置を命じるヨーロッパ人権裁判所が設置されており、膨大な数の判決が蓄積されています。日本はヨーロッパ人権条約の締約国ではありませんが、ヨーロッパ人権裁判所の判決には、日本の人権問題にも類推可能な論点が多く含まれています。

ヨーロッパ人権裁判所(フランス・ストラスブール)にて裁判傍聴

研究テーマの意義・面白さ

法律や法学というと、国ごとに違うもの、国際とは無縁のものというイメージを持たれるかもしれません。しかし、実際には、法は一国で完結したものではなく、国際機関などを通して外から監視され、様々な勧告も受けています。また、諸外国でも似たような人権問題が見られるものです。国際人権法の研究を通して、実は身近なところにある人権問題を可視化し、「外からの視点」で日本を見ることができます。また、ヨーロッパ人権裁判所のような国外の事例と向き合うことで、「法」を通して、自分自身と世界のつながりが垣間見えるところに、研究の面白さがあります。

分担執筆した書籍
高校生や学生へのメッセージ
授業や課外活動などの「守られた」環境だけに身を置かず、時には自分にとって快適ではない場にも出向いて、視野を広げてください。そして、小さな(特に他人には理解されないかもしれない)ことでも良いので、社会の中に「何となく違和感がある」部分を見つけたら、何に対して違和感を覚えるのか、その原因はどこにあるのか、深く掘り下げて考えてみてください。
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